アブソリュートのアウディが完勝。ジャパンカップ首位のスタディに悲運/GTWCアジア第7戦もてぎ

 7月22日(土)、栃木県のモビリティリゾートもてぎでファナテックGTワールドチャレンジ・アジア・パワード・バイ・AWS第4ラウンドのレース1となる第7戦の決勝が行われ、アウディスポーツ・アジア・チーム・アブソリュートの11号車アウディR8 LMS GT3 EVO II(アンドリュー・ハリヤント/ジェイムス・ユー)が優勝を飾った。

 タイのブリラムで開幕した2023年のGTWCアジアは、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキットを転戦し、第4ラウンドの舞台・もてぎを迎えた。昨年、ここもてぎはカレンダーに含まれておらず、初走行を迎えるチーム/ドライバーも多い。

 シリーズはこのあと、岡山国際サーキット、マレーシアのセパン・サーキットと転戦するが、とくに日本籍チームが日本ラウンドで争う『ジャパンカップ』のタイトルは、ここもてぎと次戦岡山で決着するため、“最終ラウンド前”の重要なレースウイークを迎えている。

 午前に行われた予選の結果、レース1のポールポジションはファントム・プロ・レーシング29号車アウディR8 LMS GT3のリン・カンが獲得。2番手にザ・スピリット・オブ・FFFレーシングの19号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo、3番手にはアブソリュート・レーシング992号車ポルシェ911 GT3 Rがつけた。

 この15分間のレース1予選では、セッション残り5分の時点でスピン車両が発生したため、赤旗に。このタイミングで多くのドライバーがアタックをしており、本来のパフォーマンスをタイムに反映できていない陣営も多かったものとみられる。

 レースは60分、レース1予選を担当したドライバーがスタートし、25〜35分の間にピットインし、ドライバー交代を行うレギュレーション。GT3車両には90秒、GT4車両には125秒という一律の最低ピットタイムが設定されているほか、前戦のトップ3には1位15秒、2位10秒、3位5秒がサクセスハンデとして追加される。

 GT3カテゴリーでは、前戦優勝のクラフト・バンブー・レーシング37号車に+15秒、トリプルエイトJMR88号車に+10秒、R&Bレーシング4号車に+5秒が与えられている。

 グリッド表では、予選2番手の濱口弘に富士戦での5グリッド降格ペナルティと、ここもてぎでのペナルティポイント累積により10グリッド降格、合わせて15グリッド降格のペナルティが発出され、992号車ポルシェが2番手スタート、11号車アウディのハリヤントが3番手スタートへと繰り上がった。

■レース序盤に混乱が重なる

 強い日差しが照りつけるなか、気温29度/路面温度47度というドライコンディションで、15時20分にフォーメーションラップがスタート。

 スタート直後の1〜2コーナーでは混戦となるなか、29号車のリンが首位を守り、後続を引き離していく。

 その背後では11号車が2番手へと浮上し、アウディのワン・ツーに。992号車が3番手、その背後には7番手スタートだったAASモータースポーツ・バイ・アブソリュート・レーシング911号車ポルシェのブティコン・インタラプワサクがポジションを上げてくる。プラス・ウィズ・BMW Mチーム・スタディの5号車BMW M4 GT3の山口智英はグリッド順と同じ5番手を維持して、オープニングラップを終えた。

 3周目、アブソリュートの2台のポルシェは911号車が前に出るが、その直後に992号車が背後から3コーナーで追突する形で接触。お互いに大きくポジションを落としてしまう。これにより5号車BMWの山口が表彰台圏内へとポジションを上げる。

 さらにこの周の90度コーナーでは、サイド・バイ・サイドになっていた87号車ポルシェと4号車ポルシェのさらにイン側に飛び込もうとしたファントム・プロ・レーシングの333号車アウディがコースイン側をカットする形で止まりきれず、3台が接触してしまう事態に。

 アクシデントは続き、ヘアピンでは5号車BMWの山口が37号車メルセデスにインを突かれる形で接触され、マシンを損傷しピットへと向かう。このラウンドを迎えるまでジャパンカップをリードしていた山口/荒聖治組のレースは、ここで終了となってしまった。

プラス・ウィズ・BMW Mチーム・スタディのBMW M4 GT3(山口智英/荒聖治)

 開始15分過ぎ、ヘアピンで911号車のインタラプワサクがDステーション・レーシング47号車アストンマーティン・バンテージGT3を駆る星野敏のインをつき、両車は接触。その脇をカーガイ・レーシング1号車フェラーリ488 GT43の木村武史がオーバーテイクしていった。

 なお、このあと992号車、911号車には接触の非があるとして、ドライブスルーペナルティが科せられている。

■プロによる終盤戦の攻防

 ピットウインドウが開く直前、29号車アウディの11号車アウディに対するリードは約3秒。11号車の7秒後方に、37号車メルセデスがつける展開となっていた。

 25分経過直後から、続々とマシンがピットへと飛び込んでくるが、首位29号車はウインドウ後半となる残り27分時点までピットインを引っ張る。首位のままコースへと復帰した29号車だったが、そこへ11号車のユーが近づき、アウトラップのうちにかわされてしまうことに。11号車は見事にアンダーカットを成功させた形となった。

 その後方では、ピットストップでサクセスペナルティを消化した37号車を、ポルシェセンター岡崎18号車ポルシェの上村優太が先行し、事実上の3番手へと浮上していた。

 ユーは1分51秒台の好ラップを刻みながら後続を引き離していき、残り20分の段階で2番手29号車に7.5秒の差をつける。その9秒後方には18号車上村、さらに37号車のファビアン・シラーも追い上げ、表彰台争いが加熱していった。

 この後方では、ポジションを上げてきたマエザワ・レーシング555号車フェラーリ488 GT3の横溝直輝が、5番手87号車ポルシェのテールを追っていた。

 残り12分、上村はカオを完全にロックオン。4コーナーの立ち上がりでワイドになった29号車のスキをつき、2番手に浮上。5コーナーまでに37号車も29号車をパスし、上村とシラーの戦いは2番手争いへと変わるが、やがて両車は1秒以上のギャップがつき、上村は2番手を安全なものに。

 29号車はその後も後退。ここに87号車をパスした555号車横溝、トリプルエイトJMR88号車メルセデスAMGのルカ・ストルツ、アウディスポーツ・アジア・チーム・アブソリュート13号車アウディのフランキー・チェン、そして予選でつまづき19番手スタートとなっていたカーガイ・レーシング1号車フェラーリのケイ・コッツォリーノが迫った。

 残り4分、V字コーナーで555号車横溝が29号車をパス。続いて88号車のストルツも29号車をパスし、続くバックストレッチで横溝に並びかける。サイド・バイ・サイドで進入した90度コーナーでストルツが先行し、88号車は一気に4番手へとポジションを上げた。

 最終ラップ、横溝に対して、13号車、1号車が迫るが、横溝はわずか0.237秒差でフィニッシュラインまで逃げ切り、5位の座を死守した。

 この結果、11号車アウディが後続に約22秒のギャップをつける独走で、オーバーオール優勝。2位となったポルシェセンター岡崎の永井宏明/上村組が、ジャパンカップ最上位となった。

 GT3シルバーカップは29号車アウディが制し、GT3アマは19号車ランボルギーニ(濱口/大蔵峰樹)がトップフィニッシュとなった。

 今戦では2台のみのエントリーとなったGT4カテゴリーは、YZレーシング・ウィズ・BMW Mチーム・スタディの50号車BMW M4 GT4 G82の加納政樹/織戸学組が制している。

 第8戦の決勝レースは23日(日)の11時40分にフォーメーションラップがスタートする予定だ。

2位に入ったポルシェセンター岡崎の18号車ポルシェ911 GT3 R(永井宏明/上村優太)
マエザワ・レーシングの555号車フェラーリ488 GT3

■ファナテックGTワールド・チャレンジ・アジア・パワード・バイAWS

第4ラウンド/第7戦決勝レース結果

Pos. No. Class Team Car Driver Laps/Gap

1 11 GT3 Pro-Am アウディスポーツ・アジア・チーム・アブソリュート アウディR8 LMS GT3 EVO II A.ハルヤント/J.ユー 32Laps

2 18 GT3 Pro-Am ポルシェセンター岡崎 ポルシェ911 GT3 R(992) 永井宏明/上村優太 21.965

3 37 GT3 Pro-Am クラフト・バンブー・レーシング メルセデスAMG GT3 EVO A.シュウ/F.シラー 22.781

4 88 GT3 Pro-Am トリプルエイトJMR メルセデスAMG GT3 EVO H.H.プリンス・アブ・バーカー・イブラヒム/L.ストルツ 37.349

5 555 GT3 Pro-Am マエザワ・レーシング フェラーリ488 GT3 P.ブロムバクディ/横溝直輝 39.016

6 13 GT3 Pro-Am アウディスポーツ・アジア・チーム・アブソリュート アウディR8 LMS GT3 EVO II S.ジンズー/F.チェン 39.253

7 1 GT3 Pro-Am カーガイ・レーシング フェラーリ488 GT3 木村武史/K.コッツォリーノ 40.150

8 85 GT3 Pro-Am クラフト・バンブー・レーシング メルセデスAMG GT3 EVO J.リー/M.ゲーツ 43.907

9 29 GT3 Silver ファントム・プロ・レーシング アウディR8 LMS GT3 EVO II L.カン/C.チー 46.577

10 87 GT3 Silver R&Bレーシング ポルシェ911 GT3 R(992) L.イェ/B.ユアン 52.465

11 888 GT3 Pro-Am トリプルエイトJMR メルセデスAMG GT3 EVO H.H.プリンス・アブドゥル・ラーマン・イブラヒム/B.フィーニー 54.150

12 72 GT3 Pro-Am ハブオート・レーシング ポルシェ911 GT3 R(992) M.チェン/A.パレンテ 55.423

13 47 GT3 Pro-Am Dステーション・レーシング アストンマーティン・バンテージAMR GT3 星野敏/藤井誠暢 1’03.737

14 14 GT3 Pro-Am ハブオート・レーシング・ウィズ・GTO ポルシェ911 GT3 R(992) B.リー/安岡秀徒 1’08.208

15 19 GT3 Am ザ・スピリット・オブ・FFFレーシング ランボルギーニ・ウラカンGT3 EVO 大蔵峰樹/濱口弘 1’11.315

16 55 GT3 Am チームウエマツ マクラーレン720S GT3 植松忠雄 1’11.828

17 3 GT3 Am クライマックス・レーシング メルセデスAMG GT3 EVO H.ユーチー/B.イェ 1’27.917

18 7 GT3 Am コメット・レーシング フェラーリ488 GT3 山﨑裕介/辻子依旦 1’30.138

19 2 GT3 Pro-Am クライマックス・レーシング メルセデスAMG GT3 EVO Z.ビーファン/D.リンド 1’38.750

20 33 GT3 Pro-Am チームGMB メルセデスAMG GT3 EVO 羽田野宏明/細川慎弥 1’39.571

21 22 GT3 Pro-Am KCMG ホンダNSX GT3 EVO P.イップ/E.リベラティ 1’45.223

22 51 GT3 Am AMACモータースポーツ ポルシェ911 GT3 R(991.1) A.マクファーソン/W.ベン・ポーター 1Lap

23 25 GT3 Pro-Am NKレーシング ポルシェ911 GT3 R(992) 内山清士/近藤翼 1Lap

24 17 GT3 Pro-Am クレフモータースポーツ マクラーレン720S GT3 鈴木祐子/井上雅貴 1Lap

25 360 GT3 Am ランアップ・スポーツ ニッサンGT-RニスモGT3 西川正明/田中篤 1Lap

26 50 GT4 Silver-Am YZレーシング・ウィズ・BMW Mチーム・スタディ BMW M4 GT4 G82 加納政樹/織戸学 3Laps

27 718 GT4 Am チェックショップ・ケイマニア・レーシング ポルシェ・ケイマン718 GT4 RSクラブスポーツ 大塚直彦/小林翔 4Laps

NC 911 GT3 Pro-Am AASモータースポーツ・バイ・アブソリュート・レーシング ポルシェ911 GT3 R(992) V.インタラプワサク/A.ピカリエロ 12Laps

NC 60 GT3 Pro-Am LMコルサ フェラーリ488 GT3 中西慧/脇阪薫一 17Laps

NC 5 GT3 Pro-Am プラス・ウィズ・BMW Mチーム・スタディ BMW M4 GT3 山口智英/荒聖治 28Laps

NC 992 GT3 Pro-Am アブソリュート・レーシング ポルシェ911 GT3 R(992) B.ジンロン/M.カイローリ 30Laps

NC 333 GT3 Pro-Am ファントム・プロ・レーシング アウディR8 LMS GT3 EVO II X.アン/M.マック 30Laps

NC 4 GT3 Pro-Am R&Bレーシング ポルシェ911 GT3 R(992) L.ウェイ/D.オルセン 30Laps

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