「けが悪化しても」 朝乃山、覚悟の土俵 高い集中力、無意識の投げ

 強い朝乃山が土俵に戻ってきた。左上腕負傷による休場から再出場した朝乃山は「覚悟」という言葉を何度も口にしており、その表情にも厳しさが増した。「気付いたら7勝7敗。再出場するからには、勝ち越しは頭にある」。一度も負けられない状況で新大関を退けての3連勝を果たし、このままの勢いで真夏の土俵を白星で締めくくる。

  ●21年夏場所以来 結びの一番勝利

 満員御礼の会場に「あさのやまー」と何度も声が飛び交った。結びの土俵に立つ朝乃山は勝負師の顔に変わった。厳しい攻めの相撲で、霧島に何もさせずに5秒で勝負を決め、大きく息を吐いた。「投げは体が反応した。無意識だった」と語り、集中力の高さが際立っていた。

 過去3勝2敗だが、最後に対戦した2021年夏場所では上手投げで敗れている。霧島は今や看板力士、朝乃山は平幕となり、立場は逆転した。「思い切っていくことだけを考えていた」と話し、挑戦者として土俵に上がった。

 再出場してからの朝乃山は雰囲気が変わった。きっかけは「休場している時、テレビで中継を見ていて、早く出場したいって思った」ことだった。自ら掲げた「年内に三役」という目標を果たす焦りもある。「けがが悪化してもいいくらいの気持ちで土俵に上がっている」と覚悟を持つ。

 加えて、朝乃山に向けられる大声援が背中を押す。特に結びの一番は歓声も拍手もひときわ大きくなる。結びで勝ったのは、21年夏場所9日目以来となり「連日、応援してもらっているので、結びで勝てたことがうれしかった」と表情を緩めた。

 取組後の取材でも引き締まった表情だった朝乃山だが、最後は「もう暑いので帰りますね」とにやり。堂々とした足取りで会場を後にした。

 ■自分の相撲、自信になる 朝乃山一問一答

 ―取組を振り返って。

 あの投げも思い切った結果。相手をよく見て、ここしかないと思った。投げは体が反応した。

 ―再出場から3連勝だ。

 気付いたら7勝7敗です。自分も途中出場するからには、勝ち越しは頭にある。自分の相撲を取り切って来場所につながるように。千秋楽は悔いのないようにしたい。

 ―気持ちの変化があったのではないか。

 気持ちの変化は、休場しているときにテレビで見ていて、早く出場したいっていうのがあった。

 ―立ち合いは決めていたのか。

 昨日の夜に決めていた。

 ―久しぶりに結びで勝った。

 新大関に、自分の相撲を取って勝てたことは自信にしたい。連日、応援してもらっているので、結びで勝てたことがうれしかった。

  ●富豊が勝ち越し 三段目 

 西三段目32枚目の富豊(高岡市出身、金沢学院大附属高OB、時津風部屋)は東三段目33枚目の龍司を下手出し投げで撃破し、勝ち越しを決めた。

 3勝3敗同士の対決で白星をつかみ、3場所ぶりの勝ち越しとなった。来場所は幕下復帰に向けて勝負の場所に挑む。

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