<社説>北大東レーダー説明会 負担増なら誘致の撤回を

 住民の理解は得られたのだろうか。 北大東村への航空自衛隊の移動式警戒管制レーダー配備計画について、防衛省は20日、初の住民説明会を開いた。配備計画が住民に初めて示されたが、急ピッチで計画が進んでいることに戸惑いの声も上がった。十分な理解が得られたとは言い難い。

 2021年12月に村議会が「自衛隊誘致に関する意見書」を可決。宮城光正村長も同月、防衛省に正式に自衛隊配備を要請した。これを受け、防衛省は22年からの現地調査などを踏まえ、村を移動式警戒管制レーダー配備の「適地」と判断した。

 説明会で防衛省は、島の北東部と南部の村内2カ所を基地の候補地として検討していることを明らかにした。主要基地となる北東部に隊庁舎地区と管制レーダーなどを配備する監視地区2カ所、南部に地上電波測定装置などを配置する監視地区を整備する。施設規模は約8ヘクタールで、30人程度の駐留を予定するという。

 防衛省は配備の理由として「太平洋に進出する周辺国の航空機などへの警戒監視は喫緊の課題だ。太平洋側に隙のない警戒監視、情報収集態勢を構築するため」と説明した。

 参加した住民からは「今後も説明会を開いてほしい」「自衛隊が配備されることで標的にされるのではないかと脅威を感じる意見がある」などの声が上がったという。

 戸惑いの声が上がるのも当然だ。村による住民説明会は開催されておらず、誘致の目的や、住民生活への影響について村の考えが住民に十分に示されていないのが現状だ。

 村議会が可決した意見書では、自衛隊誘致により台風などの災害対応や本島への急患搬送の体制を強化できるとした。だが内倉浩昭航空幕僚長は、20日の会見で「今は(急患搬送の)速度や能力が上がるとは言えない」と述べた。誘致による村議会の期待は当面、実現は難しい状況だ。

 誘致を巡っては、住民にもさまざまな意見があるだろう。レーダー配備により、村民の生活がどう変化するのか、誘致した村や村議会には住民に対し丁寧な説明が求められる。

 説明会では、将来的なミサイル配備などを懸念する住民の声もあった。説明会で防衛省は「現時点では移動式警戒管制レーダー配備以外の検討はない」と説明した。

 しかし、陸自駐屯地が配備された与那国島では、地対空誘導弾(ミサイル)部隊の追加配備が計画されている。

 安全保障環境の変化があると防衛省が判断すれば、機能や配備される部隊が拡大する可能性もある。

 自衛隊の配備や強化が、周辺諸国との緊張をあおるようなことはあってはならない。誘致の効果が少なく、住民の負担増のみにつながるようなことがあれば、村や村議会は誘致の撤回も視野に入れるべきだ。

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