道路脇の「グレーチング」、兵庫で相次ぎ盗難500枚 転売目的か 丹波、北播地域に被害集中 

グレーチングの盗難現場。道路管理者の兵庫県は応急措置としてパイロンで注意を促す=丹波篠山市

 道路脇の側溝を覆う鉄製のふた「グレーチング」の盗難被害が、今年に入って兵庫県内をはじめ全国で相次いでいる。県警によると、6月中旬までの速報値で被害総数は約500枚に上り、丹波、北播地域周辺で特に目立つ。金属価格の上昇に伴う換金や転売の目的とみられ、警察や自治体は、パトロールを強化し、盗品が持ち込まれる可能性があるリサイクル業者に周知している。(谷口夏乃、伊藤颯真)

 6月末、JR福知山線に沿うように通る丹波篠山市の県道77号。パトロールをしていた県職員が、川代1号トンネルの出入り口付近で側溝の異常に気付いた。

 縦1.1メートル、横1.5メートルのグレーチングが2枚、なくなっていた。通行車両が脱輪する危険性があり、県は新しいふたを発注するとともに、応急措置としてパイロンを置いて対応した。

 県警捜査3課によると、兵庫県内でグレーチングが盗まれたとする被害届の受理件数は、今年1月1日から6月16日までに計86件(速報値)。東播方面(51件)と阪神方面(31件)の2エリアで被害全体の9割以上を占める。

 目立つのが、都市部を外れた北播地域(東播方面)や丹波地域(阪神方面)での被害。二つの地域は、転売先とみられる大阪や京都へのアクセスが良い幹線道路が通る。

 盗難被害は、人通りが少ない道路沿いで多く発生しているが、私有地からの届けも確認されている。

 丹波市春日町の自動車整備工場では、敷地内にあった3枚がなくなった。「業務に大きな支障は出ていないが、いい気はしない」と担当者。防犯カメラを設置していたものの、保管場所は死角に入り、手がかりは写っていなかったという。

 グレーチングなど屋外の金属製品の盗難は、過去にもたびたび集中して発生してきた。今年に入ってからは、兵庫だけでなく、静岡や三重など各地で被害が確認されているが、丹波地域のリサイクル業者は「物価高で金属の値段も安くないものの、そんなにもうかるような気はしない」と首をかしげる。

 ある捜査関係者は、グレーチングは、盗みに特別な機材を必要とせず、数も多いことから狙われやすいと明かす。対策としては鍵の取り付けが有効だが、通行車両のタイヤをパンクさせる恐れや溝の掃除の妨げになり、現実的ではないという。

 県警生活安全企画課は、声かけの励行など地域ぐるみでの防犯意識の向上が抑止につながると強調し、「グレーチングを運ぶ不審な人物や車両を見かけたら、積極的に通報してほしい」と呼びかけている。

© 株式会社神戸新聞社