軍艦島「XRプロジェクト」 日英の研究者ら意義語る 出島メッセ長崎でシンポジウム

プロジェクトの意義を語るガータイス准教授(右)ら=長崎市尾上町、出島メッセ長崎

 かつて炭鉱の島として栄えた長崎市の端島(軍艦島)の操業時の暮らしを最先端のXR(クロスリアリティー)技術などで再現し、疑似体験する研究プロジェクト「ザ・ハシマXRプロジェクト」の一環で、シンポジウムが22日、同市内であった。日英の歴史研究者らが歴史教育や遺産保全に活用する同プロジェクトの意義を語った。
 世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」構成資産で、日本の産業近代化をけん引した端島。同プロジェクトは、実世界と仮想的な映像や情報を融合して多様な視覚体験を可能とするXR技術を活用し、1974年の閉山以前の炭鉱施設や暮らしを忠実に再現。ゲーム形式でプレーヤーが疑似体験しながら、産業近代化の歩みへの理解を深める。
 シンポジウムでは、制作中の映像の一部を流し、同市の建築家、中村享一さん(72)らメンバーがポイントなどを説明した。
 プロジェクトの共同研究代表で東京大東洋文化研究所のクリストファー・ガータイス准教授(日本近現代史)は、「端島は日本の産業近代化を世界史的な視点で見るケーススタディー(事例研究)になる」と意義を強調。英国のXRデザイナー、ジェイコブ・マクドナルドさんは「映画のような映像をゲーム形式で体験してもらうことで、歴史を学ぶ教育のツールになる」と語った。
 約60人が聴講。今後は軍艦島デジタルミュージアム(同市)や長崎総合科学大の橋本彼路子研究室(建築計画)の協力で得た情報を基に、当時の家電やインテリアなどを映像に落とし込み、来年春の一部公開を目指している。

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