第105回全国高校野球長崎大会・第13日 創成館、海星が決勝へ

1失点で完投した創成館の永本(左)、3回裏に2点二塁打を放つ海星の田川一=県営ビッグNスタジアム

 第105回全国高校野球選手権長崎大会第13日は22日、長崎市の県営ビッグNスタジアムで準決勝が行われ、第5シード創成館と第3シード海星が決勝へ進んだ。決勝は昨年と同じ顔合わせ。
 創成館は第1シード大崎に3-1で競り勝った。四回2死二塁から永本の右翼線適時二塁打、中村の中前適時打で2点を先行すると、七回2死二塁で川﨑が中前へエンドランを決めて1点を加えた。守っては右腕永本が完投。終盤はたび重なるピンチを1失点で耐えた。大崎は八回に1点を返したが、続く好機で併殺に倒れ、九回は2死満塁で一本が出なかった。
 海星は第2シード長崎日大に6-0で快勝した。三回1死から峯が中前打で出塁すると、犠打を挟んで山口、村田、田中、田川一が長短4連打。さらに四球の後に角野が右中間2点二塁打を放ち、この回だけで6点を奪った。投手陣は左腕吉田翔が5回、右腕髙野が4回を投げて完封リレーした。長崎日大もたびたび好機はつくったが、つながりを欠いた。
 23日は休養日。最終日は24日午前11時5分からビッグNで決勝を実施する。

◎創成館 永本が投打で躍動

 2点リードで迎えた九回2死満塁のピンチ。ここまで1人で投げ抜いてきた創成館の先発永本と相対するのは、今大会屈指のスラッガー中村。最後の力を振り絞って投じた144球目。打球が左翼馬渡のグラブに収まった瞬間、永本を中心に歓喜の輪が広がった。稙田監督は「最後まで粘り強く戦ってくれた。選手たちの成長に驚かされる」と目を細めた。
 志願の先発マウンドだった。「ワクワクしていた」と言う背番号3の右腕は、130キロ台後半の直球を見せ球に、鋭く落ちるスライダーをコースに投げ分けて的を絞らせなかった。八、九回のピンチも「四球を怖がらずにコースを突けば打たれないと思っていた」と粘投。強打の大崎を相手に1失点で完投した。
 4番打者としての役割も果たした。四回2死二塁から、右翼線へ先制の適時二塁打。永本に引っ張られるように打線もつながった。5番中村が中前適時打で続くと、七回2死二塁からは川﨑が「変化球を狙っていた」と高めのカットボールを中前にはじき返して貴重な3点目。準々決勝まで打率2割5分と不振にあえいでいたチームが、大崎の好投手を攻略した。
 春の九州地区県大会決勝で敗れていた大崎にリベンジしてつかんだ2大会連続の決勝進出。次の相手は昨夏の県大会決勝で屈したライバル海星だ。「先輩の思いを背負って昨年の借りを必ず返す」(永本)。二つ目のリベンジを果たせば、5年ぶりの甲子園だ。

◎海星「最弱世代」が偉業に王手

 春の選抜大会で県勢初の甲子園ダブル出場を果たした長崎日大と海星が激突した一戦。1枚の夏切符獲得に王手をかけたのは海星だった。今季は練習試合を含めて一度も勝てていなかったライバルを、ここ一番で退けた選手たち。準々決勝までチーム打率2割3分7厘と4強で最低だった打線が三回に襲いかかった。
 口火を切ったのは8番峯。選抜出場校ながら指導陣から「最弱世代」と評され、この夏も「きょうが最後の試合だ」と言い続けられた。「悔しかった。ベンチ外の3年生のためにも絶対に甲子園に行く。下位打順でチャンスをつくろうと思って打席に立った」。三回1死、甘い変化球を逃さず中前へ運んだ。
 続く吉田翔が送って2死二塁。託された好機で上位陣や中軸が応えた。4試合連続で複数安打を記録した山口、今大会から背番号をつかんだ村田の連打でまず2点。さらに準々決勝まで12打数2安打と苦しんできた田川一、無安打の角野にそれぞれ会心の2点二塁打が飛び出した。
 スコアボードに得点が刻まれたのは、この三回の「6」だけ。完封リレーで反撃を許さなかった左腕吉田翔と右腕髙野の働きも大きい。これで吉田翔は16回を無失点、髙野も11回を自責点1と抜群の安定感を保ち、疲労を分け合って決勝へ進んだ。
 「最弱世代」が挑むのは2連覇とともに、歴代の先輩たちが成し得なかった初の3季連続甲子園。「今まで貫いてきた野球をぶれずにやりきる」。主将の田川一は力強く言い切った。


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