楽しい海、川…潜む危険 夏休みシーズン、県外では死亡事故も

夏本番を迎え、海や川など水辺での事故が懸念される=遊佐町・西浜海水浴場

 本県を含む東北地方が梅雨明けし、海や川などに出掛ける機会が増える中、水辺での事故の発生が懸念されている。県外では既に死亡事故も発生。学校は夏休みに突入し、子どもらが被害に遭う危険性は高まる。水難事故防止に向け、関係機関などは気の緩みによる注意不足や過信が事故を招くとして、注意を呼びかけている。

 「川は水深が深い所ほど穏やかな流れに見えるが、水流が速い場合がある」。国土交通省酒田河川国道事務所の河川担当者はこう指摘する。清流などでは、光の屈折などで実際の深さより浅く見えることもある。担当者は川に入る場合、深さや流れの速さを木の棒などで十分確認する必要性を強調する。深い所はこの時期でも水温が低いことがある。特に本県内陸部では海に比べて身近な川に、子どもだけで近づくこともあり、注意が必要だ。

 本格的な海水浴シーズンが幕を開け、県内では庄内浜の海水浴場が連日にぎわっている。海は波の高さや強さ、深さも海岸ごとに異なり、天候などでも変化しやすい。「離岸流」にも警戒しなければならない。打ち寄せた波で運ばれた海水が、まとまって沖に戻る強くて、速い流れで、競泳選手でも抜け出すのは、難しいとされる。波のある海岸は楽しさもある一方、離岸流が発生しやすい。巻き込まれた場合、砂浜と平行に泳ぐなどの逃れ方はあるが、そもそも巻き込まれないことが重要だ。

 遊佐町の各海水浴場で監視活動をする「遊佐ライフガード」の総監視長平野修也さん(37)は、溺れた場合の対処法として「慌てずに浮いて待つことが命を守る」と指摘する。水を飲むなどして冷静さを失い、パニックになってしまいがちだが、場合によっては無理をして泳ごうとせず、浮いて助けを待つことも重要だと訴える。「泳ぎに自信がある」「そんなに深くない」…。そんな思いから溺れるケースは少なくない。平野さんは「水辺での楽しさの裏に危険が潜んでいると理解することが重要だ」と強調した。

【水辺で遊ぶ際の注意点】

▽足が着く深さで遊び、飛び込まない

▽子どもだけでは水辺に行かず、大人の手の届く範囲で遊ばせる

▽水の中でも発汗はあり、熱中症や体調不良の危険性がある。小まめに水分補給する

18~22年―県内水難事故は20件、死者7人

 県警地域課のまとめによると、県内で7、8月に発生した海や川でのレジャーによる水難事故は2018~22年で海15件、川5件で死者は7人となっている。

 近年は19年8月に酒田市浜中の海で泳いでいた男子大学生が高波にさらわれて死亡した。鶴岡市の小波渡海水浴場では20年8月、男児が遊泳中に溺れて一時意識不明となり、21年8月には遊泳中の40代男性が溺れて亡くなった。

 川では、19年8月に舟形町の最上小国川で60代男性が孫らと川遊びをしていた際に溺れて死亡。11年6月には山形市山寺の紅葉川で水遊びをしていた小中学生3人が深みにはまり溺れた。

© 株式会社山形新聞社