製作責任者に若手女性を抜てき 吹上山車組・中村さん「気負わず頑張る」 八戸三社大祭

吹上山車組の若手女性制作陣と山車飾りの色付け作業をする中村さん(中央奥)=13日、八戸市

 八戸三社大祭の吹上山車組では今春、山車制作部門を統括する製作責任者に中村多香子さん(32)が就任した。女性が責任者を務めるのは珍しく、中村さんを慕って山車小屋には例年より早い時期から若手制作者が集まり作業を進めている。中村さんは「気負わずにみんなと協力しながら頑張りたい」と本番に向け仕上げ作業に打ち込む。

 八戸市類家出身の中村さんは八戸第一中学校1年の時、同組のおはやしの横笛で祭りデビュー。制作を始めたのは高校時代で、同組のメンバーから誘いを受け、休日にちょっとした飾りを付ける程度から始めた。「初めは遊びに来るぐらいの感覚。みんなで和気あいあいとしゃべりながら作業するのが楽しかった」と当時を振り返る。高校卒業後は仙台市の大学に進学。祭り本番の時期は帰省して活動を支えてきた。

 中村さんの働きぶりを長年見守り、製作責任者に抜てきした副委員長兼製作総責任者の豊嶋伸一さん(54)は「手先が器用で仕事も早い。センスがあるし、何より人をまとめる力がある」と評価する。現在、保育士として働く中村さん。祭り好きと手先の器用さを生かし、こども園のお遊戯会で「段ボールで小さいみこしを作って子どもたちに担がせたこともある」と話す。

 中村さんにとって、制作の思い出は、コロナ禍で祭りが中止になる前の2019年の前夜祭で、自分が作った山車がお披露目された時のこと。当時のテーマは「壽(ことほいで) 三升景清」。景清の妻・花魁(おいらん)阿古屋の花魁道中を華やかな衣装で表現した。沿道から「あの花魁すごいな」という声が聞こえた瞬間、「やってよかった」と感じたという。

 今年の制作陣は平日に10人ぐらい、土日は15、16人ほどが集まる。中村さんは平日の日中に朝から夕方まで働き、夜は町内の期間前門付けに奔走。その後、深夜まで制作陣に指示を出したり衣装制作担当者と話し合ったりする。「疲れるけど、みんなで日々の出来事を話しながら作業するのは楽しい」と笑顔を見せた。

 三社大祭が中止となっていた21年に合同運行参加100周年の年を迎えた吹上山車組。今年の作品は「雅楽舞 散手(さんじゅ)~紫式部 源氏物語の調べと共に~」。「地を鎮める舞」と伝わる「散手」はコロナ禍が鎮まってほしいという願いが込められている。中村さんは「今は豊嶋さんに助けてもらいながら役目を果たしている段階。まだまだ」と自らを鼓舞しながら奮闘を続けている。

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