インディ500以来のオーバル復帰戦で9位の佐藤琢磨「足回りが決まっていないのをエアロで誤魔化している感じ」

 NTTインディカーシリーズ第11/12戦はアメリカ中西部アイオワのショートオーバルコースで行われるダブルヘッダーレース。前の週末にはカナダ・トロントの市街地でレースをしているが、忙しいレースでもあった。

 今年もアイオワは地元のスーパーマーケット『ハイビー』のサポートで、2日間のレースを行うかたわらでエド・シーランらのアーティストを迎えてコンサートも開催。土曜日、日曜日とレースと音楽というコンテンツに富んだタイムスケジュールとなった。

 5月のインディアナポリス500マイルレース(インディ500)以来、8週間ぶりにレースに復帰する佐藤琢磨。インディ500の時と同じデロイトのマシンカラーリングで登場した。

 前戦から8週間と少し長いインターバルを経て琢磨は、「アイオワに来てテストをしたり、シミュレーターに乗ったりしていて、なんだかんだと忙しかったです」

「時間はいつもより余裕がありましたから、データを見直したりもしていたし、それとホンダレーシングスクールの仕事で日本とミーティングしたりもしていました」とコメント。

 ここのところはインディカーの中継で琢磨の姿が見られないレースが続いており、なにやら心配な気もしたが本人は忙しく過ごしていたようだ。

 ダブルヘッダーのアイオワは、コンサートも合間に挟みながら変則的でタイトなスケジュールとなった。

 まずは金曜午後に90分のプラクティスがあり、翌土曜日の朝にいきなり予選セッションが行われ、そして土曜日、日曜日の決勝レースを迎える。

 予選フォーマットは、ウォームアップラップの後2周の計測があり、1周目のタイムが第11戦の、2周目のタイムが第12戦のグリッドを決める予選タイムとなる。

 金曜日のプラクティスでは全体で6番手のタイムをマークした琢磨。セッションを終えた琢磨は「やりたいことの60%くらいしかできなかった。もっとやりたいことはあったし、バック・トゥ・バックで比較のテストもしたかった」と、もう少し走り込みたかったという様子だった。

 土曜日の予選は、朝8時30分から予定されていたが、突然の強烈な雨により1時間半ほどのディレイを経て開始。出走順はチャンピオンシップポイントにならうレギュレーションとなっており、琢磨は18番目に登場した。

 琢磨は1周目の平均スピードが177.814マイルとなり11番手。2周目の平均スピードが177.000で13番手となった。

NTTインディカー・シリーズ第11戦アイオワ 佐藤琢磨(チップ・ガナッシ)

「朝の気温や風向きが変わっていることを予想してセッティングしましたが、全然スピードが足りませんでした」

「今回は、予選後にクルマのセッティングを変更することができないので、決勝を見据えたセッティングから予選に向けてダウンフォースを調整していくのですが、うまくマッチしていなかった‥‥」とやや意気消沈の様子。

 昨年のデイルコインのクルマでは5番手のタイムを叩き出していたことを思えば、愚痴をこぼしたくなる気持ちもわかる。

 結局予選はチーム・ペンスキーのウィル・パワー、スコット・マクラフラン、ジョゼフ・ニューガーデンが1-2-3を占める速さを見せた。

 3番手となったニューガーデンは昨年のレース1で勝利を挙げており、昨年のレース2で優勝したアロウ・マクラーレンのパト・オワードも5番手と、シボレー勢の強さが際立つ結果となった。

 琢磨自身にとってもアイオワはインディカーで初めてポールポジションを取ったサーキット(2011年)であり、3位表彰台を獲得した経験もある。決して苦手なトラックではないのだが、今年のレースはどうなるだろうか。

 14時過ぎになり、予定通りにレース1がスタート。琢磨は11番手からうまくポジションを取って8番手まで浮上する。ペンスキー勢がレースを引っ張って隊列が整いだすと、1周18秒のアイオワでは瞬く間にラップダウンのクルマが現れ始めた。

 タイヤにデグラデーションが起き始める頃になると、琢磨も1度はペースを落とすが9番手をキープして、やや早めの56周目に1度目のピットインへ。アンダーカットの効果もあって、6番手までポジションを上げることに成功した。

1度目のピットストップでは6番手までポジションを上げた佐藤琢磨

 2スティント目はやや引っ張って126周目まで遅らせ、一時はリードラップとなるもピットアウト後には後続にアンダーカットされて9番手へと順位を落としてしまう。

 琢磨はチップ・ガナッシのチームメイトであるスコット・ディクソン、アレックス・パロウ、マーカス・エリクソンとほぼ変わらないポジションを走行していたが、それよりもシボレー勢のスピードは衰えを知らず、ほぼラップダウンとなりながらレース中盤を折り返すことになった。

 これまで大きなアクシデントもなくクリーンな展開となっていたが、151周目にグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン)の単独クラッシュでイエローコーションが導入となる。琢磨はこれでラップダウンから挽回し10番手をキープ。

 166周目にレースは再開されたが、10番手からさらなる挽回をかけるほどの勢いはなかった。最後のピットストップでも順位は大きく変わらず、琢磨は9位でチェッカー。

 レースは『コーンキング』の異名を取るジョゼフ・ニューガーデンが制し、ランキングも2位に浮上。トップのパロウとの差を縮めた。

スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)とバトルをする佐藤琢磨

 勢いのあったペンスキーのニューガーデン、マクラフランが1-2フィニッシュを決め、オワードが3位と表彰台をシボレー勢が占める結果となったレース1。

 その反面、チップ・ガナッシはエリクソンが4位、ディクソン6位、パロウ8位、琢磨9位で全車トップ10入りとなり、ホンダ勢で一番安定した結果ではあったものの、エリクソン以外はラップダウンにされる始末と悔しい結果となってしまった。

 レース後に琢磨は、「マシンがうまく決まっていなくて、メカニカルな部分とエアロの部分がケンカしてしまうようなクルマでした。足回りが決まっていないのをエアロバランスで誤魔化しているような感じで、250周全ラップ、ウエイトジャッカーでバランスを直しながら走っていました」

「ピットインのタイミングは、たらればの部分はありますけど、とてもペンスキーのクルマに追いつくようなスピードはなかったですね」

「明日に向けてセッティングを変えたとしても、今日の彼らのスピードに追いつけるかどうかはわからない。それでも、なんとか追いつけるように明日は頑張りたいと思います」と、8週間ぶりに参戦したインディカーでの悔しい結果とマシンの状況に少し落胆しつつも明日のレース2へ向けて意気込んでいる模様だ。

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