社説:子の付き添い入院 親の負担軽減へ見直し急務

 子どもが入院する際に、親が泊まり込みで世話をする「付き添い入院」の過酷な状況が問題となっている。

 ほとんど目が向けられてこなかったが、国は子育て支援策として取り組むべきだ。

 病児とその家族を支援する東京のNPO法人が昨年11~12月に調査した。全国の3643人から583病院について得た回答によると、病院から付き添いを「要請された」と答えた人は全体の約8割にのぼった。

 付き添いは制度上、「任意」で、入院中の世話は看護師らが担うものとされている。付き添い入院の根拠は、厚生労働省の通知である。「子どもまたは知的障害のある患者の場合は、医師の許可を得て家族らが付き添うことは差し支えない」としている。

 だが看護師の人手不足や子どもの精神面から、病院が保護者に要請している実態がある。

 そのため体裁上、親の希望という形で医師の許可を得る「付き添い願い書」を提出することも多い。矛盾を感じつつ、やむなく応じている保護者もいるのではないか。

 回答者の大半は食事や入浴の介助など、本来は医療従事者が果たすべき役割を担っていた。

 服薬まで請け負い、誤った薬を飲ませてしまった事例のほか、人工呼吸器の管理など医療的ケアに従事した回答もあったというから驚く。

 付き添い環境も整っていない。半数が子どもと同じベッドで就寝していた。子どもから目を離せないため、7割弱が院内のコンビニや売店で食事を購入する実態も浮かんだ。

 子どもの世話などで大半の人が睡眠不足で、体調を崩したという声も大きい。だが、病院でケアや支援を受けられたのはわずか2割にとどまる。

 新型コロナウイルスの影響で交代が制限され、親が1年間缶詰め状態になるケースもあった。経済的な負担も多く、仕事にも影響を及ぼしている。

 看護体制の拡充や保育士ら専門職の配置で、できるだけ付き添いをせずに済む環境を整えねばならない。やむを得ない場合でも、食事や睡眠などへの配慮が欠かせない。

 長期入院では仕事への影響を最小限に抑えられるよう、法定の看護休暇を充実することも検討してはどうか。

 NPO法人からの改善要望を受け、こども家庭庁と厚労省は本年度中に小児医療機関を対象とした実態調査に乗り出す。

 もともと厚労省は2021年に全国調査を実施しているが、回答率が低くて不調に終わっていた。それ以降、対応策の検討が手つかず状態だったのは反省すべきだろう。

 子どもや付き添う親にどのようなサポートが必要なのか。現場の実情を把握した上で、効果的な対策の実施を急ぎたい。

© 株式会社京都新聞社