貯金2200万円の47歳女性、実家に帰る予定だけど再就職は厳しそう。運用しながら生活水準を維持できる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、47歳、会社員の女性。あと6年後に実家に戻って生活する予定だという相談者。地元での再就職は期待できないため、資産運用をしながら現在の生活水準を維持したいと考えています。FPの秋山芳生氏がお答えします。


現在、都内で正社員として働いていますが、少し前に父が亡くなり田舎に母が1人となったため、実家に戻ることを考えています。

戻ったあとは、現在、会社から出ている家賃補助が6年後に無くなる予定。また、現在の会社でこれ以上収入が上がる見込みはありません。

実家は母親名義の持ち家で、兄弟がいますが、私が引き継ぐことになると思います。実家は地方の田舎で、自分の年齢で再就職となると厳しいというより、募集が全く出ていないという状況です。FIREとまでは行きませんが、現在ある貯金を投資に回して、あと数年、ある程度のリスクを取って少しでも増やし、就職先が見つからなくても現在の生活が維持出来ればと思っています。6年後に退職は可能か、6年でなくてもいつ可能になるでしょうか。

なお、年に1回50万円程度の海外旅行も出来ればしたいです。母は70歳を過ぎましたがまだ働いており、健康と収入に問題はありません。

取り止めがなく申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。

※相談文は一部編集しています。

【相談者プロフィール】

・女性、47歳、会社員、独身

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:25万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:50万円

・給与・事業収入以外の収入:0円

・毎月の世帯の支出の目安:12万5,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:1万円

・食費:3万5,000円

・水道光熱費:1万円

・教育費:5,000円

・保険料:0円

・通信費:1万5,000円(在宅ワークが減り、Wi-Fiを見直して約5,000円は節約可能)

・車両費:2万円(実家に置いてある。たまに乗る時の燃料費、車検・保険費用)

・お小遣い:3万円

・その他:0円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:12万5,000円

・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円

・現在の貯蓄総額:2,200万円

・毎月の投資額:2万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:0円

【老後資金】

20代は厚生年金ではなかったのですが、定期便の内容では、ここの部分は年間7,000円のみの受取額となっていました。30代、40代は厚生年金で30代の時の手取りは平均で20万円ほど。個人年金に月額2万円で現在10年ほど加入。

秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼FP YouTuberの秋山芳生です。

今回のご相談は、資産2,200万円の47歳独身(女性)の方からです。25万円の収入の中から、12.5万円で生活し、残りの12.5万円は貯蓄に回しているので、生活費はかなり抑えられているようです。

会社からの家賃補助がなくなる6年後までに、実家に帰り、母親との二人暮らしをしながらアーリーリタイアができるのか心配ですよね。残された6年間で準備するべきことは何かを一緒に考えていきたいと思います。

節約できそうなポイントは通信費と車両費

まず、現状の家計状況を確認していきます。

◆実家に帰っても住宅コストはゼロにならない

家賃は勤め先から家賃補助が出ており、負担は1万円です。家賃を会社が負担するかたちなので、実際の収入は25万円よりもう少し多いと考えて良いでしょう。

実家に帰れば今までかかっていた家賃の1万円はなくなりますが、固定資産税や、修繕費、火災保険など、持ち家でもランニング費用は発生します。家賃がかからない場合でも住宅費に月平均1万円はかかると考えておいた方が良いでしょう。

◆通信費は1万円以下を目指すこともできそう

通信費が1万5,000円とのことですが、こちらは相談者さまも認識しているとおり、改善できるでしょう。例えば家のWi-fiに5,000円、スマホ代に3,000円、NHK2,150円(地上契約・クレカ払い)であれば、1万150円になります。Wi-fiも5,000円以下、スマホも3,000円以下のものもあるので、総額1万円以内を目指してみるのもおすすめです。

◆車両費は一番の節約検討ポイント

車両費については、今は乗っていないので、実家に帰るまでは売却してしまう方がよいかもしれません。車検代も2年に1度は発生しますし(新車の場合は3年)、たまに乗るために自動車保険に入っていたらランニングコストが高すぎると思われます。

いったん自動車に乗るのは本格的に実家に帰った時にしておき、自動車保険を中断しておく手もあります。中断しておけば、再開した時に等級も引き継げるので、無駄な保険料を払わないで済みます。

実家に帰った際に自動車の運転が必要であれば必要な日にちだけ補償が降りる1Day保険などもあるので考えてみても良いでしょう。

以上、家計を少し軽くすることでセミリタイアした際に、資産の減りを遅くすることもできますし、稼がなければいけない金額も少なくできます。

実家に帰る前にお金を増やす手段はある?

続いて、収入についてです。

25万円の手取りと50万円のボーナスがあるので、手取り年収は350万円になります。この収入を増やすには主に3つの方向性があります。

1)昇給する
2)転職して収入を上げる
3)副業をする

現在お勤めの会社で昇給の見込みがないのであれば、思い切って転職をする手もあります。

もしこの先、転職をすることがあれば、自分の年収は家賃補助分も加味して考えていないと困る場合があるので注意が必要ですね。仮に家賃補助分が7万円あり、その分が支払われていれば手取りの給与は32万円ということになります。

25万円✕12ヶ月+50万円(ボーナス)=350万円
32万円✕12ヶ月+50万円(ボーナス)=434万円

と、かなりの差がでるので家賃分を意識して転職先を考えておくと良いと思います。

もし、勤め先が副業を解禁していなければ、副業をはじめて収入をアップすることもできます。特に多いのが、WEBライター、動画編集、ブログ・アフィリエイト、せどり、SNSの運用代行などです。

リモートワークとオンラインでできる副業は相性が良いので、興味を持てる分野があればチャレンジしてみると良いでしょう。副業に真剣に取り組めば、月に5〜10万円ほどの収入を安定的に得ることも可能です。

オンライン副業を本業に変えていくことができれば、実家のエリアの募集業務に限定されずに済みます。

FIREのスタイルから実家での生活をイメージしよう

6年後のアーリーリタイアを考える際、FIREという概念を知っておくと、どのような状態を目指すのかが明確になると思います。

FIREは、「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとった概念で、経済的に自立し、会社などの就職状態を辞めて自由な選択ができるようになることを指します。

このFIREにも、色々な種類があると言われています。

◆ファットFIRE…金融資産の運用益や配当金だけでリッチな生活を送る。
◆フルFIRE…労働はせず、金融資産から生まれる利益を取り崩し一般的な生活を送る。
◆リーンFIRE…生活費をギリギリまで下げ、少ない運用益でもその中で暮らしていく。
◆サイドFIRE…副業のことを米国ではサイドハッスルとも呼ぶ。自分自身が楽しみながら、自主的に行う副業的な仕事を継続しながら、資産収入+副業的収入を組み合わせて生活する。
◆バリスタFIRE…サイドFIREと違いアルバイトなどで雇用収入を得ていきます。このアルバイトも無理のない範囲で自分の好きな仕事を行います。例えばコーヒーショップで日に3時間、週3日働くなどのイメージです。
◆コーストFIRE…現在の生活を維持するための支出と、将来の生活を担保するための貯蓄や投資を分けて考えます。コーストFIREは、将来のお金を先に貯めて、現在の生活のみの生活費を稼ぐことに集中したFIREです。新たに貯蓄や投資に回すお金を考えなくて良いので、少ない労働でも生活がしやすくなります。

どの状態を目指すかによって、必要な資産額は変わってきますが、ご相談者さまの場合は、サイドFIREやコーストFIREなどは十分に狙えると思います。

実際にどんなプランになる?

FIREを目指す際にベースになる考え方に、「4%ルール」と呼ばれるものがあります。米国の株式インデックスに50%、米国債などに50%の割合で投資し、運用益を4%ずつ取り崩していけば、30年経っても資産が枯渇する可能性は極めて低くなるというものです。

現在2,200万円の資産を運用に回し、仮に4%ルールを当てはめて考えると、2,200万円×4%の88万円を毎年取り崩して生活するイメージです。現在のペースで年間収支200万円資産が増えるとすると、6年で1,200万円資産が増えるので、3,400万円×4%=136万円となります。月額にすれば11.3万円となるので、あと1万円の収入があれば良いことになります。

ただし、資産の全額を運用に回すことは、非常にリスクが高くなってしまうので、生活防衛費として1年分から2年分の現金を持っておきたいところです。

仮に生活防衛費400万円、運用資産3,000万円とした場合は、3,000万円×4%=120万円。これに毎月約2.5万円の収入があれば、現在の年間生活費150万円と同じになります。

投資は「慣らし」から始めよう

理論上は「早く投資に回した方が有利」と言われています。確かに、積立で投資信託を買うよりも、一括で投資に回した方が有利ではありますが、投資に慣れていない場合は資産の増減に対する耐性ができていないため、怖くなって投資を途中で辞めてしまう場合があります。特に何年かに1度は暴落がおきるので、精神的に追い込まれて「これ以上下がらないように今のうちに投資から脱出しよう」となりがちです。

現在ご相談者さまは、投資の経験がありませんので、まずは、大きな金額を投資に回すのではなく、減っても精神的にキツくない金額から投資に回すと良いでしょう。できれば、2023年内はつみたてNISAで、年間40万円までの投資に抑えて、資産の増減に慣れると良いと思います。来年からは「新しいNISA」が始まり、年間360万円を投資に回すことができます。つまり、毎月30万円を投資に回していくこともできますが、慣れるまでは投資可能上限まで使い切らずに、自分のペースで投資していけば良いと思います。

6年で準備ができれば今の生活は維持できる

6年かけて、「リモートワークで場所を選ばない仕事」と「投資」のマインドセットをしっかりと持つことができれば、実家に帰っても今の生活は維持できると思います。

今はお母様もお元気とのことですが、いつかは介護が必要になる可能性もあります。介護を実際に行うだけでなく、金銭面の負担も考えなければいけない可能性もあります。また、年に50万円ほどの旅行や、友人との交流なども考えると「資産運用」に頼り切るのではなく「リモートで無理なく稼ぐ力」を作ることが重要に思います。もし副業が禁止になっている場合は、副業可でリモートワークが可能な転職先を検討した方が良いかもしれません。

今のうちからできることをコツコツと積み上げていくことで、外的な環境に縛られず、自由な生き方を送れるようになるはずです。どこか参考になれば幸いです。

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