「災害級」の猛暑から一時避難、市役所や図書館に「クーリングシェルター」じわり 冷却パックや飲料水提供「利用市民からも好意的な声」

7月から設けられた「さんだクールステーション」で涼む市民ら=三田市けやき台1、ウッディタウン市民センター(撮影・橋本 薫)

 「災害級」ともいわれる近年の夏の猛暑。気温とともに高まる熱中症のリスクを軽減するため、公共施設を一時避難所として開放する動きが広まりつつある。市町村の設けた避暑施設を「クーリングシェルター」として指定できる改正気候変動適応法が来春にも施行されるのを前に、試行的に導入したり、独自の対策を取り入れたりする自治体も出てきた。

 兵庫県三田市は7月1日から、市役所本庁舎や各市民センター、市立図書館など14カ所の施設に休憩スペース「さんだクールステーション」を設けた。ソファなどの周囲にのぼりを立ててPR。屋外の暑さを避けて一時的に身を寄せてもらうほか、体調不良者には冷却パックや飲料水を提供する。

 県内では他市町に先駆けた取り組みで、市危機管理課の担当者は「今年はより暑さが強まるという予報を受け、法の施行前に開設を決めた。利用した市民からも好意的な声をいただいている」とニーズを実感しているようだ。

 神戸市も7月21日から市役所ロビーの試験開放を始めた。「クーリングシェルター」としての開放はあらかじめ日時を定めた4日間のみだが、ロビーは日ごろから市民が利用できる。市環境創造課は「シェルターの人員配置や必要な設備など、国からはまだ具体的な基準が示されていないが、利用者へのアンケートを通してよりよい機能を検討していきたい」とする。

 熱中症の危険が高まったと予測された場合、気象庁などは「熱中症警戒アラート」を発表して注意を呼びかけている。来春にも施行される改正法では、同アラートの役割を明記。さらにより危険が迫ったことを告げる「熱中症特別警戒情報」も新設する。特別情報発表時には、各市町村が指定するクーリングシェルターを開放することが義務付けられる。シェルターは例年、熱波に見舞われるカナダやイギリスでの対策を参考にしたという。

 すでに全国では公民館や図書館、商業施設を暑さ対策に活用する例があり、環境省が昨秋に行った調査によると、回答した自治体の2割が避暑施設を設けていた。シェルターとは異なるが、大阪府では3年前から独自の取り組みとして、猛暑時に店舗の一角で休憩できる「クールオアシス」を募集。今年は薬局チェーンや携帯電話ショップなど360カ所以上が協力している。

 環境省はシェルターの設置要件について「冷房は必須だが、新たな職員の配置や特定の設備を求めるわけではない。指定された各施設の開館時間に応じて開放してもらえれば」と自治体に新たな負担は強いない考え。その上で「近所にシェルターがあれば、自宅にエアコンがない方も緊急避難できる。住民の命を守るため普及させてほしい」と呼びかける。(井沢泰斗)

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