【台湾】侯氏、中台の衝突回避を強調[政治] 国民党が党大会、政権交代掲げる

政権交代を目指し、気勢を上げる国民党候補の侯友宜氏(前列右から4人目)ら=23日、新北(NNA撮影)

台湾の最大野党、国民党は23日、新北市で開いた党大会で侯友宜・同市長を2024年1月に行われる総統選の同党候補とすることを正式に決めた。党主席(党首)の朱立倫氏は、与党・民主進歩党(民進党)の政権下で中台関係の緊張は高まり、「台湾は世界で最も危険な場所になった」と非難した。侯氏は「両岸(中台)の交流を強化し、衝突(の可能性)を低下させ、台湾を戦争から遠ざける」と強調し、政権交代を掲げて気勢を上げた。

国民党の党大会は新北市板橋区の体育館で行われ、馬英九前総統や蒋万安台北市長ら党所属の県市長、総統選と同時実施の立法委員(国会議員)選挙の候補者らが出席した。

朱氏は、民進党の蔡英文政権が発足した2016年以降、「民進党は絶えず(中国に対して)反中、抗中を掲げてきた」と指摘。総統選の民進党候補、頼清徳副総統がかつて自身を台湾独立を主張する政治家だと述べたことを取り上げて「台湾だけでなく、全世界の友人が台湾は戦争の危機に陥るのか、最も危険な場所となるのか心配している」と述べた。

一方で国民党は「中華民国を永遠に守る政党だ」と主張。米国と親しくし、日本と友好を築き、中国と和することが国民党の一貫した姿勢だとして「国民党は政権を奪還した後には平和を築く」と強調した。

侯氏も民進党政権下で、「台湾海峡は世界で最も危険な場所であり、戦争が発生する可能性が最もある場所だと国際的に認識された」と発言。一方、国民党政権の時代には経済の発展や社会の安定に尽力したと述べ、国民党主席だった連戦氏による05年の中国訪問や、15年の馬氏と中国の習近平国家主席の会談などに触れて「台湾海峡の安定、両岸の平和の基礎を強固なものにした」と強調した。

侯氏は「戦争を回避し、平和を追求することが、国家の領袖(りょうしゅう)にとって最も重要な責任だ」と主張。その上で「台湾の民主自由の制度を守る。台湾独立と一国二制度に反対し、台湾により平和で、より安定、繁栄した未来を築く」と意気込みを述べると、会場からは「凍蒜(当選)」の掛け声が上がった。

■韓氏との連携アピール

党大会では、20年の前回総統選の国民党候補、韓国瑜氏と侯氏が連携を示す場面があった。中央通信社によると、侯氏は党大会が始まる前の23日朝、会場入り口で待機し、姿を現した韓氏と抱擁を交わした。侯氏は、20年の総統選に韓氏が出馬した際に支援が十分ではなかったとして謝罪の意を表明し、24年の総統選に向けて韓氏と協力していきたい考えを示した。

韓氏はこれに対して、中華民国の繁栄や両岸の平和・交流などを希望すると表明した。

党大会の会場では、韓氏は侯氏のあいさつの後、国民党所属の現職県市長に続いて壇上に上がり、侯氏と再び抱擁を交わした。壇上に並んだ際には、馬氏の隣に立つなど存在感を示した。

韓氏は18年の統一地方選で高雄市長に当選し、一躍注目を集めた。高雄市長に当選したものの約半年後に総統選出馬を表明し、「職務を投げ出した」と批判され、総統選では蔡氏に約260万票の差をつけられて敗れた。

連携をアピールした侯友宜氏(中央)と韓国瑜氏(左)=23日、新北(NNA撮影)

■郭氏は「失望させない」

一方、EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手、鴻海精密工業創業者で、総統選に出馬するかどうかが注目されている郭台銘氏は23日、フェイスブックを更新。「みなさんが自身の動向に関心を持っていることを知っている」と切り出した上で、「私はみなさんを失望させないし、選挙と政治に新たなスタイルをもたらす」とコメントした。中央通信社によると、総統選への出馬の意思を固めていると解釈されている。

このコメントに対して、侯氏は23日、地元メディアの取材に対して、自身と郭氏の信念は同じだとして「団結する」と述べた。

郭氏は国民党の公認候補として総統選出馬を目指していたが、国民党は5月中旬、台北市で中央常務委員会を開き、侯氏を公認候補とすることを正式に承認した。

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