再出場後攻めの4連勝 「来場所につなげたかった」 朝乃山勝ち越し

 左上腕の負傷で途中休場した元大関が崖っぷちの状況から無傷の4連勝とし、千秋楽に勝ち越しをつかみ取った。「再出場したからには勝ち越したかった。来場所につなげる相撲を取りたかった」。再出場してからは持ち前の攻めに徹する相撲を貫き、負傷を感じさせない力強さで白星を並べ、真夏の土俵で再び上を目指す覚悟を示した。

 正統派の右四つと左四つの対決にファンの期待が大きく膨らんだ。朝乃山と若元春は四つ相撲を得意とする日本人力士として、抜群の人気を誇る。29歳の同い年だが、幕内の土俵では初めて肌を合わせた。観衆の期待通りに差し手争いの攻防が繰り広げられた真っ向勝負の相撲は、会場の熱気を高めた。

 12日目に再出場した朝乃山は、西前頭筆頭の翔猿、元大関正代を好内容で下し、14日目には新大関の霧島を豪快なすくい投げで撃破した。

 千秋楽の取組後にも「きょうも痛みがあった」と語った通り、左腕の状態は万全な訳ではない。それでも上位陣の相手を圧倒する相撲を見せ続けた。「再出場で吹っ切れた。何が何でもというつもりでやった」。前半戦では黒星も重なり、納得いく相撲が取れないもどかしさもあったが、再出場後は余計なことを考えず集中力が増した。

 場所中の休場から再出場し、勝ち越したのは2020年秋場所の平幕霧馬山(現霧島)以来、2年10カ月ぶり。朝乃山は「けがで終わるのではなく、勝ち越して終われたことは自信にしたい」と達成感をにじませた。

  ●氷見場所「出る方向」

 8月27日には大相撲氷見場所(富山新聞社、北國新聞社主催)も控えており、朝乃山はけがの状態を確認しながら「出る方向で」検討する考えを示した。

 来場所は三役昇進を目指す戦いとなる。「けがをしない体作りをしていく」と語り、まずは左上腕の治療を優先させる。その上で今場所は果たせなかった優勝争いに加わる決意で「来場所こそはという気持ちはある」と力強く語った。

© 株式会社北國新聞社