氷見市の島尾海水浴場で半世紀近くにわたり、唯一営業を続ける浜茶屋「しきなみ」が今夏、世代交代した。創業時から切り盛りしてきた店主村井征子さん(78)=同市島尾=が体力の衰えから、長男雅司さん(56)の家族に引き継いだ。雅司さんは「海の癒やしの場所を守りたい」と、地元の海水浴場のにぎわいづくりに一役買おうと意気込んでいる。
村井さんから浜茶屋を引き継いだのは雅司さん、かな子さん(54)の夫妻と、孫里佳子さん(25)。3人は自宅敷地で開設する浜茶屋の隣で、カフェやバー、居酒屋などを一体化した飲食店の開業を計画しており、浜茶屋も合わせて事業承継した。
しきなみは、島尾海水浴場が夏の一大行楽地として名をはせていた昭和50年ごろにオープンした。当時は20軒を超える浜茶屋が海辺に軒を連ね、村井さんは「海が見えんほど浜茶屋や人でいっぱいやったね」と懐かしむ。
島尾海水浴場では、観光客の減少とともに浜茶屋のほとんどが姿を消したが、村井さんは「なくなるとさみしいやろ」と営業を続けてきた。昨年から、ついに1軒のみとなったが、自慢の自家製スープのラーメンやかき氷などの提供を続け、観光客や地元住民から愛されてきた。
浜茶屋は今年、建物をリニューアルし、木の茶色と白色を基調とした爽やかなしつらいに生まれ変わった。飲食メニューは雅司さんがラーメンの味を引き継いだ。数年前から店を手伝ってきたかな子さんが考案したスパイスカレーや写真映えする青色のクリームソーダなど新メニューも用意した。
●体力衰えも「忙しいときは手伝うよ」
今年の営業は15日から始まり、すでに休日には海水浴客で満杯になるほどの盛況ぶりとなっている。雅司さんは「小さいころから、やっぱり島尾の海が好き。この場所を残していきたい」と話し、村井さんは「引き継いでくれてうれしい。でも、まだ忙しいときは手伝うよ」と笑顔を見せた。