用意するお金は3ヵ月分?30代の資産形成でNISAとiDeCoはどう使うべきか

社会人経験も10年前後となり、職場でも頼りにされることが多い30代は、人生のさまざまな転機がおこり得る年代ではないでしょうか?

今回はそんな30代向けに、NISAとiDeCoをどのように活用したらいいのか考えてみたいと思います。


必要な時に必要なお金が準備できている

厚生労働省の2020年の人口動態調査によると、平均初婚年齢は男性が31歳、女性が29.4歳だそうです。もちろんあくまでも平均ですから、実際の婚姻年齢には幅がありますし、結婚するか否かも人それぞれです。それでも、30代は結婚をはじめ、さまざまなライフイベントが起こりうるタイミングではないかと思います。

そのため、使いたい時に使えるお金が十分ある状態を維持することが重要です。具体的には、お金を目的別に分け、適切な金融商品で運用することです。

お金は、「使う」「貯める」「増やす」「守る」の4つに分けて管理しましょう。使うは日常生活に使うお金です。ここは基本生活費の3ヵ月分くらいを普通預金口座に準備します。例えば月の生活費が20万円であれば、普通預金には常に60万円がある状態を維持します。

この「使うお金」の考え方も、人により異なります。独身でお勤めの方なら家賃の3ヵ月分くらいでも十分でしょう。夫婦のうち1人だけが働き、子どもが小さいという方なら、住居費と食費、日用品費など日々の暮らしに必要なお金も含め3ヵ月をめどに準備します。

使うお金というのは、日々の暮らしの費用と、何かあった時にすぐに支払ができる様にしておく財布です。実際に会社員の場合、病気で長期療養が必要になったとしても、健康保険から傷病手当金が支給されるので急に無収入になることはないのですが、それでも普段より入ってくるお金が減るため、そのリスクをカバーするために3ヵ月分を目安に準備しておきます。従って、傷病手当金などの公的保険が不足する自営業の方などは、もう少しいつでも使えるお金を準備しておく必要があります。

仮に3ヵ月分の生活費が60万円だとすると、給料日にはそこに20万円を追加し生活をし、給料日の前日には残高が60万円に戻る、というのを繰り返します。

ネット銀行の定期預金金利もチェック

「貯めるお金」は、5年から10年以内に使う予定があるお金を入れるお財布です。お子さんが小学校に入学する際には、机を買ったりランドセルを買ったりとお金もかかるでしょう。節目節目には、海外旅行を楽しみたいという計画も、家電やクルマの買い換えなど、まとまったお金が必要なものは、「なんのために、いくら」を明確にしたうえで、貯めるお金のお財布の中で準備をしていきます。

利用する金融商品は、銀行の定期預金です。どこの銀行でもゼロ金利でしょう、とあきらめずに、ネット銀行などを調べてみられるといいでしょう。確かに大手銀行の金利は0.002%というところも多いですが、ネット銀行では0.2%以上の金利もよく目にします。

日本の場合、銀行など金融機関は預金保険機構に加入していますので、元本1,000万円とその利息については、万が一その金融機関が破綻しても守られることになっています。ちなみに保険会社の破綻の際は、生命保険契約者保護機構により、一定の保障があります。さらに証券会社の破綻の場合、顧客の資金は証券会社の資金とは完全に分別することになっていますから、万が一の際にもお金が戻らないということがありません。

例えば金利が良いからと5年定期を選んだ場合、満期前に解約すると中途解約利率が適用されますが、元本が割れるということはありません。3年以上の定期預金は半年複利で利息が計算されるので、やはりここもお金を使う予定に合わせて上手に選びたいものです。

定期預金の他、個人向け国債も選択肢です。8月に発行される「変動10年」の金利は、0.28%と発表されています。半年に1回金利が見直しされるので、今後の金利上昇も期待できます。

変動10年は、満期が10年ですが、1年経過後はいつでも中途解約が可能です。その場合、直前2回分の利子が差し引かれますが、元本が割れることはありません。1万円から購入できるので、「貯めるお金」としてリスクをとらずに運用をするのには適しています。

30代のように、さまざまなライフイベントが起こる年代の場合は、定期預金や個人向け国債など、「元本が割れない金融商品」を適切に保有することはとても重要です。ここが不足すると、「増やすお金」から切り崩さなければならなくなります。増やすお金は投資に回すお金ですから、長期でしっかり増やすためのお財布です。手元資金が足りないから、損失が出ているけど解約しなければならない、といった状況は極力作らないように、貯めるお金は適切な金額で維持できるよう意識しましょう。

NISAとiDeCoは併用する

「増やすお金」は、10年以上先の予定のお金あるいは、当面使う予定のないお金を運用するお財布です。基本的にはNISAやiDeCoといった税制優遇のある仕組みを利用し、投資信託を積立で購入していきます。

例えば35年後に老後資金として2,000万円を準備したいという場合、月々2万円の積立であれば、運用利回りは4.5%程度必要です。投資商品は色々考えられますが、忙しくてあまり投資に手間を掛けたくないという場合は、「8資産均等型」と呼ばれるバランスファンドも選択肢です。

前回の20代の方向けの解説で紹介した「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)」に連動したバランスファンドは、世界中の株式にのみ投資をする投資信託でしたが、こちらは債券を含む8つの資産に分散投資をする投資信託です。具体的な配分としては、日本の債券、先進国の債券、新興国の債券に12.5%ずつ、日本の株式、先進国の株式、新興国の株式に12.5%ずつ、さらに日本のリート、海外のリートに12.5%ずつ均等に国際分散投資を行う投資信託です。

リートとは、オフィスビルや商業施設、あるいは物流倉庫など「建物」を所有しその家賃収入を主な利益として分配する仕組みです。昔から投資先に不動産を含むのは「資産の三分法」などと言われ、株式をハイリスクハイリターン、債券をローリスクローリターン、そして不動産をミドルリスクミドルリターンの投資先と表現されたりします。

NISAとiDeCoは、お金を使う目的で使い分けます。老後資金作りが目的であればiDeCoですし、60歳よりも手前で使う予定のお金の場合はNISAを利用します。iDeCoは掛金が所得控除になりますから、ご夫婦の場合、所得が高い方がiDeCoを利用する、扶養されている方は手数料が不要のNISAを利用する、といった使い方もできます。

例えば、月に3万円積立が可能な場合、30代のうちはNISAに2万円、iDeCoに1万円、40代後半になったらNISAに1万円、iDeCoに2万円と比重を変えてもいいですし、積立額そのものを増額もしていきたいところです。

最後の「守るお金」は、保険で準備します。万が一の死亡や重い病気など、いつ起こるか分からず、経済的リスクが大きいことに備えるには保険が最も適しています。

30代は投資可能期間が長いからこそ、用途別にお金を4つに分け、金融商品の適材適所を心がけてみて下さい。

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