別府市、地元産農産物の直販ルート整備へ マッチングさせ新商品創出も【大分県】

野菜の出来を確認する恒松敬章さん=別府市内竈
プラットフォーム事業のイメージ図

 【別府】別府市は地元産農産物の直販ルートを整備する事業に乗り出している。農家と宿泊・飲食事業者が登録するマッチングサイト形式のプラットフォームを構築し、事業者は必要な食材や新しい料理のアイデアを書き込み、農家は栽培する農産物をPRする。地元食材を使った新しい名物料理の創出も目指す。来年以降、プラットフォームを稼働させる方針。

 市は本年度をプラットフォーム運用に向けた「検証段階」と位置付け、地元農産物の需要を把握するため市内のホテル、飲食店へヒアリングを実施。市農林水産課によると、7~8店舗が事業への参画に意欲を示しているという。

 別府市内竈の恒松敬章さん(35)はナス、トマトなどを「少量多品目」で栽培している。収穫した野菜のほとんどを市内や日出町の直売所へ出荷。農家としての収入はわずかで、家族で営むまんじゅうなどの加工品販売の収入が8割を占める。

 「生産した農作物を余らせないよう、安くしてでも買ってもらうことを意識していた」と語る恒松さんは、プラットフォーム事業を通じ野菜が高値で取引されるのを期待する。「事業者の需要に合わせて栽培品目を変えるなど、できる努力をしていく」と意気込む。

 農林水産省の農林業センサス(2020年)によると、農作物販売で生計を立てている市内の農家は152軒。県内の自治体で16番目と下位の状況だ。

 市農林水産課は市内の農家の多くが兼業で、「荒廃農地化」を防ぐために農業をしていると分析。「自分たちの生産する農産物に価値があるということを知ってもらうのがプラットフォーム整備の第一歩だ」と話す。

 事業費の329万7千円は、国のデジタル田園都市国家構想交付金でまかなう。市は今後、地元農産物を活用した新商品の開発支援、低農薬の農産物研究への助成事業も進めていく方針。

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