別府市のウクライナ避難民9人、日本の運転免許取得 地元NPOが教習所での通訳などサポート【大分県】

日本の運転免許を取得し、息子を小学校から連れて帰るウクライナ避難民のオレーシア・ツビリュークさん(左)=別府市

 【別府】別府で暮らすウクライナ避難民のうち、自動車の運転を望む9人全員が日本の免許を手にした。母国のライセンスを切り替えるための学科・技能審査に昨秋以降挑み、最後の2人が今月パスした。生活基盤の強化のほか、日本社会への適応が進んだ「証し」として自信にもつながっている。地元のNPO法人が教習所での通訳、取得費などを全面的に支えた。

 9人とも母国の運転免許を持っていたが、来県後は徒歩やバスで日用品の買い出しなどをこなしていた。早い人で別府での避難生活は2022年春から続く。さらなる長期化も見込まれる中、国内免許の取得は就労などと並ぶ課題だった。

 学科・技能審査の準備は、普段から生活を支えるNPO法人「ビューティフル・ワールド」(別府市田の湯町)が支援。教習所の大分運転免許スクール(大分市三佐)で実技を練習し、県運転免許センター(同市松岡)で審査を受けた。

 当初は8人が希望し、昨年中に7人が通過。苦戦していたオレーナ・コロレンコさん(35)と、今年加わった別の1人が7月上旬に全てをクリアした。

 同スクールによると、ウクライナは右側通行。9人は左折時に膨らみがちになるなどの傾向があった。基礎的な運転技術の向上も課題だった。指導員の安部陽一さん(57)は「必死に挑戦している姿を見て、指導にいっそうの責任感を覚えた」と振り返る。

 9人が使うロシア語を話せる同法人の小野一馬さん(37)ら3人も教習車に同乗し、日本語を通訳。それ以外のときは簡単な英単語や紙に描いた絵で直接、やりとりした。

 別府のウクライナ避難民は大半が一つの市営団地で暮らす。コロレンコさんは「運転ができれば仲間を買い物に連れて行くこともできる。助け合いの道が広がった」と意義を語る。身分証として使う際には「社会人として信用されている実感、日本の一市民として生活している満足感」も覚えるという。

 仲間と車をシェアして使うオレーシア・ツビリュークさん(39)は来県して1年2カ月。往復約4キロ歩いてスーパーに買い物に出かけていたが、苦労が減った。今は子どもを小学校に迎えに行くこともある。「来日後、初めて自分の手でつかんだ資格。当初は誇らしさ、今は支えてくれた人たちへの感謝の気持ちでいっぱい」と話す。

<メモ>

 県警運転免許課によると、外国の運転免許を国内の免許に切り替える手続きは「外免切り替え」と呼ばれる。県公安委員会による交付数は2018~22年まで毎年200件台で推移しており、今年は5月末で155件。

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