赤ちゃんプランは、一言添えてビニール袋!

赤ちゃん連れのお客様用の宿泊プランというと、まず思い浮かぶのは「粉ミルク」「紙おむつ」だろうと思います。事実、それらが使い放題という赤ちゃんプランを販売しているお宿も最近では見かけますが、我が宿の赤ちゃんプランは、二十数年前から今に至るまで両方ともプランに付けていません。その代わり、チェックイン時にビニール袋を一枚、一言添えて差し上げます。そうすると大抵のお客様は「ありがとうございます」と頭を下げられました。

その一言とは、「こちらは使用済の紙おむつを入れるビニール袋です。お部屋の隅にでも残していただければ、こちらで処分いたします」なのです。

粉ミルクや紙おむつは旅行の途中で使用するので、元々持参されています。メーカーやブランドはお母様が選ばれたものが最適でしょう。もしかしたら意に沿わない品を差し上げても、「まっ、いいか」程度かも知れません。しかしながら、お客様のご不便ご心配を汲んで差し上げると、たとえビニール袋一枚であっても感謝されるのです。

調理長の反対は、まるで「細腕繁盛記」

ロングセラーの「ママ安心プラン『すやすや』」には、実はパイロット版がありました。

多分1999年から2000年にかけてのリリースだったと思います。その時から赤ちゃんプランには調理部手作りの離乳食をお出ししていたのですが、その離乳食を調理部に作成してもらうまでが大変でした。女将が調理部に相談に行くと調理長は、

調理師に離乳食を作らせるなんて何を考えているんだ!

離乳食なんて作ったことも習ったこともない!

というような反応だったそうです。日本料理一筋で来た調理長からすれば、当然だったでしょう。(ちなみに先日、彼は勤続30年超で全国商工会連合会から表彰されました)

ヒントは、保育園の食事メニュー

当時の離乳食、上から「だんご鍋」
「煮込みうどん」「魚と野菜の煮込み」

旅行先でご両親はその宿の料理を楽しめるけれど、一緒に来た赤ちゃんは持参した携帯用の離乳食、というのは忍びないと女将は思っていました。そんなある日、子育てサイトを運営の知人から、保育園の食事メニューをもらいました。それを見ると、調理師が普段作っているような品があり、そのメニューをもって女将は調理部に再度説得しに行ったのです。それらは出来ない訳ではない料理なので、調理長は渋々ではありましたが承諾し、「魚と野菜の煮物」「だんご鍋」「煮込みうどん」を提供できるようになりました。離乳食の提供が可能となり、赤ちゃんプランのパイロット版がリリースされました。

和食のプロがしっかり出汁を取って作った離乳食ですから、普段よりも多く食べたという声が続出。中には「出汁を売って下さい」とまでおっしゃるお客様も現れたのです。

(つづく)

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寄稿者 高尾憲資(たかお・けんすけ) 季粋の宿 紋屋 代表取締役社長

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