全国高校野球長崎大会 総評 「投高打低」際立った夏 創成館、5試合で防御率0.39

守り勝つ野球で5年ぶりに夏の甲子園出場を決めた創成館=長崎市、県営ビッグNスタジアム

 第105回全国高校野球選手権記念長崎大会は24日、第5シード創成館の5年ぶり3度目の優勝で幕を閉じた。春の選抜大会で長崎日大と海星が長崎県勢初の甲子園ダブル出場を果たし、その後の二つの県大会は大崎が制して迎えた大混戦の夏。上位校の土台にあったのは複数の好投手の存在と堅守で、4強のチーム打率はいずれも3割に満たない「投高打低」が際立った。56校49チームが熱戦を繰り広げた大会を総括する。

全国高校野球長崎大会トーナメント表

■勝負の厳しさ
 創成館は準決勝と決勝で2試合連続完投した永本を筆頭に、福盛、村田の3人で計46回を投げて防御率0.39。バックも経験豊富な遊撃川﨑、二塁下川、捕手山下を中心に安定感があり、難しい打球も危なげなくアウトにし続けた。打線は小柄な選手が並んで派手さがない分、積極的なエンドランなど「手数」(稙田監督)で勝負。泥くさく得点して守り勝った。
 準優勝は第3シード海星。長崎大会では2012、13年の佐世保実以来の連覇、チーム初の3季連続甲子園まであと一歩だった。左の吉田翔、右の髙野の二枚看板は防御率0.25。この10年で5度目となった創成館との決勝は、初回に失策絡みで2点を奪われて苦しい展開になったが、最後の最後まで諦めずに見せ場をつくった。
 第1、2シードの大崎と長崎日大は準決勝で涙をのんだ。大崎は右腕野口惺が20回1/3で2失点。山口莉、中村、川原、宮原が引っ張った打撃陣は、3本塁打を記録するなど力強かった。甲子園こそ逃したが、地域とともに進歩を止めないチームは、鍛え抜かれた心技体を随所で披露した。
 24年ぶりの春夏連続甲子園を狙った長崎日大も、今季は高い総合力で他校の目標であり続けた。廣田と西尾のダブルエースを擁し、野手陣は主将の中堅平尾、捕手豊田らがけん引。三回にまさかの6失点して敗れた海星戦は、何が起こるか分からない勝負の厳しさ、ワンプレーの重みをあらためて教えられた。

■長崎北が健闘
 ノーシードで唯一8強に入った長崎北の健闘も見事だった。エース木下は創成館との準々決勝も九回まで無失点。最後はチーム2度目の延長タイブレークで惜敗したが、自責点ゼロで大会を終えた。再三の好プレーで左腕を支えたバックにも拍手を送りたい。同じく準々決勝に進んだ九州文化学園、清峰、長崎商のシード3校も、4強入りしたチームと接戦を繰り広げた。
 無死一、二塁制のタイブレークまでもつれたのは、3回戦の海星-長崎工、大村工-九州文化学園など5試合。選手の健康管理を主目的に18年に導入され、今年から従来の延長十三回開始を十回に変更して実施された。酷暑対策については引き続き、選手第一で多角的な議論が求められる。

■3回戦突破を
 最上級生は中学3年だった約3年前からコロナ禍で、活躍の場を数多く失ってきた世代。4年ぶりの声出し応援を背に高校最後の夏をかみしめた。選手たちの輝く笑顔や涙は、濃密な日々の練習、仲間たちとの絆の強さを物語っていた。
 長崎日大の西尾をはじめ、長崎商の野原、清峰の南、九州文化学園の馬場航、瓊浦の矢野、波佐見の門田ら、2年生の好投手が多かったのも印象的だった。新チームでも“投高”を予感させると同時に、それを攻略していく各校の打撃向上にも期待したい。
 春の甲子園で決勝に進んだ山梨学院と報徳学園(兵庫)が夏切符を逃すなど、全国各地で波乱が相次ぐ中、優勝候補がしっかり勝ち上がったトーナメントを制した創成館。甲子園で県勢は3大会連続3回戦(16強)で敗れている。ライバルの思いも背負って、その壁を越える快進撃を願っている。

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