知床事故、有識者「人災に近い」 船舶で初の意見聴取会で見解

2022年5月、海面上までつり上げられた「KAZU 1」=北海道斜里町沖

 北海道・知床半島沖の観光船「KAZU 1」沈没事故で、運輸安全委員会は26日、外部の有識者らから事故原因や再発防止策の見解を聞く「意見聴取会」を東京都内で開催した。「失敗学」の見地から考察した東京大大学院の中尾政之教授は「人災に近い」と指摘し、再発防止策として小規模の遊覧船事業者が互助的に連携し、信頼できる安全管理者を選任することを提言した。

 聴取会は1974年に安全委の前身組織が発足してから9回目を数える。尼崎JR脱線事故を巡って2007年に開催されて以来、16年ぶりで、船舶事故では初めて。安全委は聴取会の議論を踏まえ、最終的な調査報告書の作成を進める。

 中尾教授は技術的な原因として船の水密隔壁の不備を指摘。組織的な原因としては、荒天が予想されているのに運航会社「知床遊覧船」が同業他社に先駆けて出航したことを挙げた。長年船員養成に関わってきた東京海洋大の矢吹英雄名誉教授が2番目に公述。「安全管理者の資格要件の厳格化、監督方法の改善が必要」と訴え「避難港に入らなかった船長の判断に重大な問題があった」と述べた。

© 一般社団法人共同通信社