セバスチャン・ローブ所属のスペシャル・ワン・レーシングで火災発生。大会キャンセルの事態に/WorldRX第4戦

 ラリークロス“発祥の地”として知られるイギリスはリデンヒルにて、7月22~23日に開催予定だったWorldRX世界ラリークロス選手権第4戦は、現地金曜21日午前にスペシャル・ワン・レーシングの作業エリアで火災が発生したことを受け事態が急転。

 同チームに所属し、2018年以来のフル参戦に臨んでいるセバスチャン・ローブやゲラン・シシェリ代表らを含め人的被害は報告されていないものの、今季より鳴り物入りのデビューを飾った『ランチア・デルタEvo-e RX』の2台を含むサービス設備のほとんどが焼損することに。

 こうした状況を受け、すぐさま火災原因の調査に入ったイベントオーガナイザーとプロモーター、そしてFIA(国際自動車連盟)は声明を発表し「安全上の理由により」大会のキャンセルを決断している。

 1967年2月4日に初の競技を開催し、このラリークロスが産声を挙げた生誕の地と言われる“ガーデン・オブ・イングランド”ことケント州のトラックは、2014年から2017年までWorldRXのカレンダーにも組み込まれ、ペター・ソルベルグやマティアス・エクストローム、アンドレアス・バッケルドらが勝利を収めてきた。

 それ以来、約6年ぶりに世界選手権復帰となったデュアルサーフェスのトラックには、この週末に電動化時代最高峰の“RX1e”クラスが初登場することとなり、最高出力500kW(約680PS)、0-100km/h加速1.9秒というイギリス初上陸の“エレクトリック・ビースト”による勝負が期待されていた。

 そんなレースウイークに向けた設営が進む21日金曜日の午前8時43分ごろ、パドックエリアにて突如として火災が発生し、運営団体からの要請を受けた現地消防団が可能な限り早く鎮圧し、消火するべく懸命に活動を続けたものの、残念なことにRX1eの車両2台を含むスペシャル・ワン・レーシングのエリア全体が焼失。

 この日はトラックアクションが予定されておらず、会場は一般公開前だったことも幸いし、この時点で負傷者はなく他チーム機材への影響もなかったが、プロモーターはFIAと連携し「火災原因の究明が最優先」として、翌日土曜のタイムスケジュールをキャンセルする決断を下した。

 この事故によりWorldRXは中止となったが、ステップアップのFIA RX2eチャンピオンシップやイギリスの国内ラリークロス選手権など、併催イベントは予定どおり実施。しかし日曜に予定されるWorldRXに関するスケジュールを「土曜日中に判断する」としていたFIAは、プロモーターとの連名で以下のリリースを公表した。

今季より鳴り物入りのデビューを飾った『ランチア・デルタEvo-e RX』の2台を含むサービス設備のほとんどが焼損することに

■充電中に車両バッテリーから火災も、根本的な原因は不明

「国際スポーツ規定の11.9.3.項に従い、スチュワードは安全上の理由からWorldRX世界ラリークロス選手権“RX1eチャンピオンシップ”の第4戦を永久に中止する決定を下しました」

「2023年7月21日金曜日の午前8時43分ごろ、FIA世界ラリークロス選手権のRX1eカテゴリーに参戦するスペシャル・ワン・レーシングの2台の車両のうち1台が火災に見舞われました。その後、地元消防の活動にもかかわらず、火災はチームの車両とトランスポーターの双方を焼き尽くし焼損させしました」

「ビデオによる検証では、チームエリアでの充電中に車両のバッテリーから火災が発生したことを示していますが、なぜこれが起こったのかは明らかではありません。チームメンバーの非常に素早い思考と行動だけが、彼らを怪我から救ったことは明らかです」

「事件の根本原因についての緊急調査は、ケント消防署、リデンヒルのトラックスタッフ、チャンピオンシップ・プロモーターらの協力を得て、FIAによって開始されました。共通バッテリーの供給サプライヤーであるクライゼル社によって、現場で技術支援も提供されています。チャンピオンシップに参加しているすべてのチームには、上記の進捗状況がつねに通知されています」

「現時点では火災につながった故障の根本原因を特定するには調査が充分に進んでいないと判断されました。また観客、チームメンバー、ドライバーに適切なレベルの安全を確保しながらイベントを進めるには、時間内の調査で根本原因を見つけることも難しいでしょう。FIAとオーガナイザーは競技続行の可能性を探るべく、イベント運営のさまざまな代替案も精査しました」

「しかし根本的な原因は不明であるため、すべての代替案は非常に危険な火災原因について『推測に基づいて行われる』との結論に至りました。さらにバッテリー製造者であるクライゼルは、調査が保留されていることから『システムに適切なレベルの保証を提供できない』としています」

「したがって、FIAの安全保障部門からの意見やプロモーターの協力を受け、関係者全員の安全を考慮し、スチュワードは競技会を中止することとしました」

王者フォルクスワーゲン・ディーラーチーム・バウハウスは、このラウンドでソンドレ・エヴジェンの昇格起用を発表していた

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