知ってますか?相続登記義務化 山形地方法務局、初の相談会

山形地方法務局の担当者が、相続登記の義務化などについて説明した講演会=山形市・遊学館

 所有者不明の土地の解消を目的に2024年度から不動産の相続登記が義務化されるのを受け、山形地方法務局は25日、山形市内で県民に法改正の要点を周知する相談会を初めて開いた。これまでは任意だったが正当な理由なく手続きしないと10万円以下の過料となる可能性がある。会場には“終活の一環”との理由で訪れた高齢者もおり「子どもたちが困らないようにしたい」と真剣な表情で担当者の説明を聞いていた。

 司法書士らが個別で相談に応じた。母が昨年11月に亡くなったという村山地方の70代主婦は「初めて複雑な手続きがあると知った。亡くなる前に知識を入れておけば良かった」と困惑した表情だった。

 山形市の70代主婦は「息子と折り合いが悪いため、相続に関する話ができない」との切実な事情を抱えていた。義務化により、手続きをしなければ過料が科せられることに対し「不安になった。将来、息子に負担をかけないようにするため、どのようにすればいいか相談しに来た」と話した。

 並行して開かれた講演会には計40人が参加し、同法務局の若菜博紀首席登記官が今回の改正の背景を説明した。注意点として「24年度以前に発生した相続も対象となる。放っておくと相続人の人数が変わるなどしてより複雑になるため、速やかな手続きが重要」などと強調した。自筆証書遺言書の保管制度の利用で相続登記の手続きが円滑になり紛失や改ざんを防ぎ、安全に保管できる点も紹介した。

 自筆の遺言書を作成中という山形市の無職男性(89)は「遺言書が無意味になってしまっては困る。『誰にどの財産を残すのか』などをしっかり明記する。できるだけ家族に迷惑をかけないようにしたいから」

◆相続登記の申請の義務化 2024年4月1日に始まる。相続などにより不動産取得を知ってから3年以内に所有権移転登記をする必要がある。正当な理由なく怠れば10万円以下の過料の罰則がある。施行前の相続でも、未登記の場合は義務化の対象となる。相続登記が任意だったことで、登記されていない土地の所有者探しに多大な時間と費用を要し、公共事業の円滑な執行に影響を及ぼすことが問題となっていた。

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