古写真で脳活性化 能登町のケアハウス、思い出話で元気に

高齢者に古い写真を見せながら説明する寺口さん=能登町宇出津新港2丁目のケアハウス縄文

  ●戦前~昭和40年代、町内で撮影

 能登町宇出津新港2丁目の高齢者施設「ケアハウス縄文」は、戦前から昭和40年代までに町内で撮影された古い写真を入居者に見せ、当時を振り返ってもらう活動を始めた。若い頃の記憶をたどり、脳の活性化や認知症の進行予防に効果があるとされる「回想法」に取り組むためで、初回となった26日は83~99歳の14人が当時の記憶や様子を思い出して語り合い、楽しいひとときを過ごした。

 活動は「れきし・ぶんか教室」(北國新聞社後援)と銘打ち、写真は昨年12月~今年3月に町立美術館で開かれた「カメラがとらえた122年」(本社後援)で展示した中から約100枚を選んだ。

 国鉄能登線の開通を祝う町民の様子をはじめ、1960(昭和35)年に映画のロケで宇出津を訪れた吉永小百合さん、64年東京五輪の聖火リレー、小木のとも旗祭りなどの写真をテレビ画面に映し出し、町教委学芸員の寺口学さん(34)が解説した。

 参加者は一枚一枚に目を細め、80代女性は漁港の活況を捉えた写真に「昔はクジラだけでなく、イルカが揚がったこともある。食べたらうまかった」と思い出話を披露した。

 宇出津の「お斎市(さいいち)」の写真が懐かしいという鵜川出身の山田京子さん(99)は「子どもの頃、友達10人と歩いて遊びに来た。いろんな物が並んどって楽しかった」と笑顔を見せた。

 「昭和の合併」で旧宇出津町などとの合併に反対する旧小木町と旧鵜川村の住民を記録した写真もあった。90代女性は「でかい声では言われんが、実は宇出津との合併に反対しとった方を応援していた」と懐かしんだ。

 回想法は1960年代に米国の精神科医が提唱し、高齢者に懐かしい物や写真などを見せ、思い出を語り合ってもらう。「もう自分の出番はない」と感情を抑え込まないことで認知症の予防や症状の緩和につながるとされている。ケアハウス縄文は取り組みを今後も継続し、入居者の心の健康増進に役立てる。

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