小矢部をクリ名産地に 昨年廃止の施設再生

クリ園に植えた苗木の状態を確認する関係者=小矢部市原牧

 昨年廃止された富山県内唯一の観光クリ園「宮島観光栗園」(小矢部市)の跡地に残るクリの木を活用し、富山市の電気工事会社が「産業クリ園」として再生に取り組んでいる。来年10月にも栗おこわなど加工品の販売を始め、「栗の町」で知られる長野県小布施町を参考にブランド化を図り、小矢部をクリの一大産地に育てて活性化につなげる。

 クリ園の再生に取り組むのはケィ・ディック電工事業部(富山市)。小布施に足を運び、クリを生かした事業に思いを巡らせていた黒田勝之社長(51)が、稲葉山中腹に位置する宮島観光栗園の廃止を知り、運営していた原牧栗生産組合(小矢部市)の元組合員に「形は変わるが、貴重なクリの産地として何とか残せないか」と打診していた。

 プロジェクト「宮島栗園(MCF=ミヤジマ・チェスナット・ファーム)」と銘打ち、原牧栗生産組合の元組合員から敷地を借りた。敷地約5ヘクタールに残された12品種約900本のクリの木には枯死や枝折れも見られたが、同社は4月から害虫に強い品種の苗木約100本を植え始め、整地や草刈りを進めている。

 今後、大粒の品種に順次切り替え、数年かけて650~700本から収獲できる状態に整備し、加工品を手掛ける産業クリ園とする計画。観光栗園のような来園者によるクリ拾いや園内散策は行わない方針だ。

 将来的には、市内の耕作放棄地にも苗木を植えて収量を上げ、一大産地化を目指す。イノシシによる食害や、クリの生育を妨げる害虫「クリタマバチ」への対応も強化する。

 収穫したクリは、栗おこわや栗きんとん、モンブランなどに加工する予定で、近くにある「道の駅メルヘンおやべ」や「三井アウトレットパーク北陸小矢部」など販路も探る。県内の別の場所に、加工場の開設も検討している。

 1987(昭和62)年に開業した宮島観光栗園は、早生(わせ)や晩生(おくて)の品種をそろえ、毎年9月中旬~10月中旬の土日祝日に営業していたが、イノシシの食害、猛暑や大雪による減産などのため、昨年、35年の歴史に幕を下ろした。

 アウトレットや観光名所である宮島峡への近さを生かして付加価値を高めることも視野に入れる黒田社長は「秋になれば小矢部を訪れたくなるような環境を整え、おいしいクリで多くの人に喜んでもらいたい」と話した。

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