大阪万博誘致の実績を誇ってきたのに…吉村府知事が国にヘルプコールで、消える血税は1000億円超の可能性

不気味と話題の「ミャクミャク」とともに、甲子園で始球式を務める吉村知事(写真:時事通信)

大阪万博について「府市が一体となって誘致した成果」「責任をもって最後までやりきる」と豪語してきた吉村洋文大阪府知事(48)がここにきてトーンダウンしている。「国の責任で」。そんなふうに言うようになった背景にあるものは……。

■「最後まで責任をもって」と言っていたのに

2025年に大阪湾の埋立地・夢洲で予定されている「大阪・関西万博」(以下、万博)に“黄色信号”がともっている。

「問題意識を共有しないといけないと思った。今は国が主体となり、建設業界に働きかけている」

7月14日の会見で、こう語った吉村府知事。岸田文雄首相(65)に面会した際、万博の準備が遅れている問題への対策を国に要望したという。

「僕は誘致のときから携わってきました。最後まで責任を持ってこのすばらしい万博をやりたいと思って」(4月13日放送『よんチャンTV』(MBS)より)

これまで万博の開催を自身や、代表をつとめる「大阪維新の会」の実績として誇ってきた吉村氏。大阪維新の会の選挙マニュフェストにもしっかり「大阪・関西万博の成功へ」と記されているのだが、ここにきての国へのヘルプコールは都合のいいものにも見える。

■国家プロジェクトだから国がなんとかせえ

「吉村府知事がやっているのは、国への“おねだり”でしょう」

そう語るのは、2025大阪・関西万博推進特別委員を務めた、日本共産党の井上浩大阪市議だ。

「万博の会場建設費は、国と大阪府と市、経済界が3分の1ずつ負担することになっています。つまり会場建設費の3分の2は税金が投入されるのです。すでに会場建設費は、資材価格の高騰や人手不足の影響で2020年12月の時点で当初想定の1250億円から1850億円に引き上げられています。しかし、その後ウクライナ危機がおこり、資材価格はさらに急騰。3年前と比べて工事コストは上昇しているのです」

海外パビリオンの建設工事が遅れていることも、会場建設費を増やす要因になりそうだ。

「海外の参加国が独自にデザインをするパビリオンは万博の目玉です。建設には、大阪市の許可が必要ですが、7月中旬になっても建設申請が1件もないことが明らかになりました。建設の遅れを解決するために、工法やデザインを簡素化した建設工事の発注を日本側が代行することを提案しています。しかし、その後の建設費を回収する方法は不明確。“間に合わないから”との理由で最終的に日本が負担することも十分ありえます」

井上氏は会場建設費が現在予算から大きく膨らむと懸念している。

「吉村府知事は“万博は国家プロジェクトなんやから国がなんとかせえ”とすがりついているかのようです。膨れあがった予算を国民の税金で、と言いたいのでしょう」

神戸大学の小笠原博毅教授(社会学)もこう語る。

「2021年の東京五輪・パラリンピックで、開催費用が当初よりも2倍に膨らみました。大規模な国際イベントでは“後出し”で費用が上乗せされます。万博も国家事業という名のもとに突き進み、建設費の総額は2倍以上になってもおかしくはありません」

仮に会場建設費が3千700億円に膨れ上がった場合、国と大阪府・市が2450億円という費用の上昇ぶんを折半して負担する可能性が高いという。もちろん、国が負担する約1200億円の税金はわれわれの血税だ。

■議会のチェック機能は働いていない

最終的な税による負担額はさらに膨らむ可能性がある。人件費や広報宣伝費、警備費などの「事業運営費」も当初は809億円だったが、万博を準備する日本国際博覧会協会はさらに500億円程度増えることを明らかにした。

「この事業運営費の8〜9割を入場券(基本料金大人7500円)の販売収入で賄うとしています。しかし、これは半年間で2820万人が来場すると見込んでのこと。東京ディズニーランドとディズニーシーを合わせた年間の来場者よりも多くの人が来ると、どのような根拠で予想したのか理解できません。来場者数が想定を下回った場合、赤字分は確実に国民のツケとなります」(小笠原教授)

万博の来場者数を増やそうと、地元企業でつくる関西経済連合会では、すでに主要企業に1社あたり15万〜20万枚の前売り券を買わせようとしている。

「一般客が来ないことを見越しているのでしょうが、政治家が政治資金パーティ券を押しつけるようなもの。見せかけの売上げ実績をつくって“成功”に仕立てあげるためでしょう」(小笠原教授)

三菱総合研究所が4月に実施した調査(回答3千人)では「万博に関心がある」と答えた人は31.5%と、2021年の調査時(29.5%)とほぼ変わっていないという。

世間では盛り上がらず、経費だけが膨れ上がる万博だが、さらに陰に隠れたコスト増がある。

「会場へのアクセス道路である高速道路『淀川左岸線』の工事費は、当初1162億円でしたが、土壌汚染の対策や軟弱地盤のための工法変更で当初の2.5倍になる2900億円に。国と大阪市がほぼ折半して負担することになります。

さらに大阪メトロ中央線を万博会場まで延伸する建設費も、地中の障害物の撤去などで、当初の250億円から346億円に膨らみました。万博関連の事業費が当初よりも増えた場合、内容を精査するべきですが、議会は万博推進派が多数を占めているためチェック機能が働いていないのです」(井上市議)

最後に、小笠原教授が語る。

「メンツにこだわらず、立ち止まって万博の計画を見直すべきです。それでも開催するのなら、せめて何にどれだけ税金を使うのか詳細を開示する必要があります」

困ったら税金で……。われわれの血税は打ち出の小づちではない。

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