神戸港で作業、石綿を吸引し肺がんに 男性3人、勤務先に賠償求め勝訴確定 最高裁、被告側の上告不受理

神戸港=2022年1月22日、神戸市中央区

 神戸港で貨物数を確認する検数作業でアスベスト(石綿)を吸引し肺がんを発症したとして、男性3人が勤務先の一般社団法人全日検(東京)に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁が全日検側の上告を不受理とする決定をしたことが分かった。全日検の安全配慮義務違反を認め、慰謝料など計約6500万円の支払いを命じた二審判決が確定した。決定は19日付。

 3人は赤木正夫さん(86)=神戸市中央区、田中恵さん(74)=西宮市、3月に81歳で亡くなった倉渕博之さん=神戸市灘区=で、全員が全日検に約40年勤務。後に肺がんと診断され労災認定された。

 3人は、相当量の石綿が入った麻袋を選んで分け、数える作業に従事していた。一審の神戸地裁判決では、麻袋の一定数が破損し、石綿が立ち込める空間にさらされたと認定。危険性や予防への知見は確立していたとして、安全対策を怠った全日検の責任を認めた。

 全日検側は、作業場所が屋外と同様だった▽阪神・淡路大震災でがれきに含まれる石綿を吸った-などとして、暴露の予見可能性や肺がん発症との因果関係を争って控訴。大阪高裁は昨年12月に控訴を棄却し、全日検側は最高裁に上告受理を申し立てていた。

 原告側の八木和也弁護士は「これまで船内での荷降ろし作業の実態解明は十分でなかったが、この判決の確定で、使用者は港湾労働者の石綿被害に向き合わざるを得なくなる」と話している。全日検は「確定した大阪高裁判決の通りに履行します」とコメントした。

© 株式会社神戸新聞社