デロイトトーマツ、育成をサポートするマネジメントシステムを開発。ホンダレーシングスクール鈴鹿に導入

 デロイトトーマツグループのデロイトトーマツコンサルティング合同会社は7月27日、スポーツ分野の選手や生徒のフィジカルデータやトレーニングおよびパフォーマンスデータなどを集約し、育成履歴なども一元的に管理することができる、スポーツ分野に特化したタレントマネジメントシステムを開発したことを発表。同システムがホンダモビリティランドが運営するホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS)に初めて導入されることを明らかにした。

 近年、スポーツ分野でもデータに基づいた選手育成・教育が必要という考えが広がりつつある。今回発表となったデロイトトーマツのシステムは、スポーツ分野での人材育成に特化したデータ入力により、選手のフィジカル・メンタル・勝敗等のさまざまな情報を可視化。データを用いてひとりひとりの強みを活かした配置・育成が可能だとしている。

 また、蓄積されたデータを時系列に管理することで、経年の上達度を見たり、選手・生徒同士の比較、戦力の分析をしたりすることが可能になり、選手・チームのパフォーマンス向上のための指導や試合の戦略立案にも役立つほか、Slack等のコミュニケーションツールとの連携も容易にできる設計のため、フィールドや国内外どこでもデータの参照ができ、データを活用したチーム内のコミュニケーションを円滑にすることが期待される。

 このシステムはデフォルト機能に加え、競技ごとの特性にあわせてカスタマイズが可能だ。そこで今回、初めて二輪・四輪のモータースポーツにおいて、世界に通用するライダー・ドライバーを育成することをめざすHRSに導入されることとなった。

 HRSでは、走行データの記録や蓄積されたデータの自動計算を行うとともに、それらのデータから各個人の強みや弱みを導きだし、データを基にしたコミュニケーションや各々の育成メニューを検討することを想定しているという。また、スター選手の生徒時代からのデータやその後選手としての活動履歴を蓄積することで、将来的には生徒の将来性や伸びしろの予測、効果的な育成方法などの開発も目指しているとしている。

HRSとは関係のない他スポーツ分野での活用サンプル画像

 今回のシステム導入にあたり、HRSの佐藤琢磨プリンシパルは「ホンダレーシングスクール鈴鹿ではスクール生の『将来性・伸びしろ』を重要視しています。しかし、経験値の異なる生徒たちが混在するなかでの正当な評価は容易ではなく、熟練講師や現役トップドライバーである講師たちも頭を悩ませています。また、『タイム計測』や『模擬レース結果』だけでなく、『取り組み姿勢』といった評価根拠となる情報も膨大な量であり、データ整備には多大な手間を要してきました」

「そういった課題を解消するために、本システムの導入を決めました。走行結果、評価データはもちろんのこと、スクール生と講師の会話までデータベースに残せる仕組みで、講師陣が行う『将来性・伸びしろ』評価をサポートします。生徒の成長や姿勢を現場で見続けている講師陣の意見はとても重要です。そこにデータ解析による科学的な根拠の裏付けが加わることで、これまで以上に精度の高い評価に繋がるものと確信しております」

「また、ユーザーインターフェイス等、デジタル化におけるシステム導入の課題においても、デロイトトーマツのサポートにより『わかりやすさ』に拘ったプロダクトへと改良を重ね、無事に運用を開始することができました今後は、本システムを基盤とした、より精度の高い『データドリブンな育成』を目指していきます。まずは、あらゆる要素をデータ化し蓄積された28年分のデータと掛け合わせて、『将来性・伸びしろ』予測を実現していきたいと考えています」とコメントしている。

 HRSは鈴鹿サーキットレーシングスクール(SRS)として1992年に開校。2022年に、国内外のトップ選手を目指すライダー・ドライバーの育成を、今まで以上にホンダの意思を入れスクールから実践までを一気通貫で指導できる体制を作るべく、スクール名称をホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS)へ変更。常時50~70名が所属し、トレーニングを受けている。

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