寺島しのぶ 異例の歌舞伎出演!戦友・猿之助逮捕で決意した愛息との梨園改革

《人生一度きり、歌舞伎座の怪人に摘み出されないように、謙虚にそして舞台ではお客様に楽しんでいただけるように力を合わせてやらせていただきたいと思います》

7月18日、女優の寺島しのぶ(50)が自らのブログを更新。東京・歌舞伎座の10月公演「錦秋十月大歌舞伎 文七元結物語」出演決定の胸中を明かした。

「成人女性の歌舞伎座本公演出演は異例中の異例です。同作は1902年(明治35年)に五世尾上菊五郎が歌舞伎座で初演。今回は山田洋次監督が演出を担当し、中村獅童さんが博打におぼれる腕利きの左官・長兵衛、寺島さんが女房・お兼を演じます。歌舞伎座の歌舞伎興行に女優が出演した例は、初代水谷八重子さんや、山田五十鈴さんが二世尾上松緑と共演した特別公演『シラノ・ド・ベルジュラック』などはありますが、通常の演目での出演は極めて珍しいです」(歌舞伎関係者)

七代目尾上菊五郎(80)の長女として生まれ、長年、歌舞伎の舞台に憧れてきた寺島。かつてテレビのインタビューで「女ゆえに歌舞伎役者になれなかった苦悩」をこう語っている。

「たぶん10歳くらいかな。そこで気付いたんですよね。女の子は歌舞伎できないんだって思ったんですよね。そこからありとあらゆる稽古を一切やめました。歌舞伎を一切見なくなっちゃいましたしね。ある期間は……」

歌舞伎役者として今秋、悲願の舞台に立つ寺島。そんな彼女の胸中には大きな喪失感があるという。

「猿之助容疑者の一家心中事件を知って寺島さんは嘆き悲しんだそうです。今回、母親に次いで、父親への自殺ほう助罪での再逮捕を聞き、茫然としていました」

そう語るのは、寺島の知人だ。

「実は猿之助さんは、寺島さんの息子・眞秀くんの才能を高く評価していたのです。昨夏、猿之助さんは座頭を務めた歌舞伎座公演『七月大歌舞伎』で眞秀くんを大抜擢。取材会でも『本当に純粋に才能を見てぜひと思った。才能にほれ込んだ』と絶賛していました。もともと眞秀くんも猿之助さんの『スーパー歌舞伎II ワンピース』が好きで“いつか出たい”と話していたそうです。

本来であれば、猿之助さんは来年2月にスーパー歌舞伎IIで『鬼滅の刃』をやる予定でした。その主要キャストの一人として眞秀くんを考えていたともいいます。寺島さんも、梨園では珍しいハーフの歌舞伎役者である眞秀くんの演技を認めてくれる猿之助さんを『歌舞伎界を変える同志の一人』だと思っていたようです」

■フランス語が堪能な猿之助に信頼を――

眞秀くんは5月、歌舞伎座で「初代尾上眞秀」として初舞台を踏んでいる。前出の歌舞伎関係者は言う。

「梨園内では寺島さんの弟・菊之助さんが菊五郎を継ぎ、その後は菊之助さんの息子・丑之助くんが菊五郎を襲名するのが筋といわれています。

ですが、寺島さんには『私は菊之助より先に生まれたのに、なぜ息子の眞秀が菊五郎を襲名できないのか』という不満があるのです。猿之助さんも『スーパー歌舞伎』で従来の歌舞伎像を変え、多数のお客さんを新たに呼び込みました。寺島さんと猿之助さんは“歌舞伎界は因習を打破し、実力で評価されるべき”という改革精神を持っていた戦友でもあったのです」

寺島が猿之助容疑者を信頼していた理由はほかにもあったようだ。

「寺島さんは将来、パリのオペラ座で眞秀くんの襲名披露興行をやりたいと心から願っています。その傍らに猿之助さんに並んでほしいと考えていたそうです。というのも、猿之助さんはフランス語が堪能。’07年、亀治郎時代にパリのオペラ座で開かれた歌舞伎公演の口上では、流暢なフランス語で観客を驚かせていました。“今後の歌舞伎界を、猿之助さんとともに盛り上げていきたい”と思っていただけに大きなショックを受けていたのです」(前出・知人)

だが、寺島はすでに前を見据えているという。

「いまはまず、10月の公演を成功させるべく、必死に稽古に励んでいます。『もう猿之助さんには頼れないから失敗は許されない』という覚悟もあるのでしょう。寺島さんは梨園を変えていくために、まず自らが体を張って認められることで、眞秀くんの新たな道を切り開こうと思っているのです」(前出・歌舞伎関係者)

先のブログで、寺島はこう綴っていた。

《50歳の挑戦として好きなことを好きな人とやる!というものを自分の中で掲げておりまして、そんな矢先お話を頂いたのがこの“文七元結”でした》

寺島の挑戦は、伝統を重んじる歌舞伎界への挑戦でもあった――。

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