本州最後のトキ「能里」 佐渡での様子写真に残る

佐渡トキ保護センターで飼育されていた能里の写真を確認する村本さん=羽咋市上中山町

 1970年に穴水町で捕獲された本州最後のトキ「能里(のり)」が、佐渡トキ保護センター(新潟県佐渡市)に移送された後の写真を、県トキスーパーバイザー村本義雄さん(98)=羽咋市上中山町=が自宅で保管していたことが27日分かった。飼育員が極秘に撮影した6枚で、ケージの中で餌を探す姿が収められている。村本さんは能登での放鳥受け入れの機運を盛り上げるため、自宅横の資料館で初めて公開した。

 村本さんによると、70年春から夏に撮影された写真とみられる。つがいとなることが期待された雌の「キン」は写っておらず、まだ別々のケージで飼育されていたタイミングの可能性があるという。

 撮影したのは当時保護センターの飼育員だった近辻宏帰さん(2009年死去、享年66歳、元センター長)。センターでは撮影が禁止されていたが、村本さんのトキ保護に懸ける熱意に応えようと非公開を前提に撮影された。

 81年に能里の様子を写した8ミリフィルムが近辻さんらから村本さん宛てに送られてきており、写真も同封されていたとみられる。

 村本さんは写真の存在を忘れていたが、トキ関係の書類を整理中に見つけた。能里が死んでから半世紀がたち、関係者も亡くなっていることから「国際朱鷺(とき)保護交流資料館」での公開を決めた。

 県歴史博物館には村本さんが提供した能里の写真が複数枚保管されているが、今回の写真は未公開で貴重な資料になりそうだ。

 村本さんは写真を参考に能里の木彫りの製作も進めており、「近辻さんも公開することを許してくれるだろう。能里の元気な写真を見て、放鳥に向けた環境保全の大切さなどを感じ取ってほしい」と話した。

 ★能里(のり) 雄のトキ。1970年1月8日、穴水湾で捕獲され、翌9日、佐渡トキ保護センターに移送された。雌の「キン」とつがいになり繁殖を期待されていたが、71年3月13日、金網にくちばしが引っ掛かって折れたのが原因で急死した。

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