東海第2 原発事故、個別に情報提供へ 茨城県が避難アプリ開発

「(仮称)いばらき原子力防災アプリ」のイメージ画面(県提供)

日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村白方)で重大事故が発生したときに備え、県は居住地に応じた避難ルートなどを住民へ速やかに伝えるスマートフォン用アプリを開発する。半径30キロ圏には約92万人が暮らし、場所によって対応が異なるため、個別の情報をリアルタイムで提供する。2024年2月の運用開始を目指す。

県原子力安全対策課によると、「(仮称)いばらき原子力防災アプリ」は利用者が居住地を登録することで、一人一人に応じた避難情報が発信される。

例えば炉心の冷却機能が喪失した場合、半径5キロ圏(PAZ)には即時避難の開始と広域避難先の案内が提供される一方、半径5~30キロ圏(UPZ)には避難指示が出るまで屋内退避を促す案内が届く。

自宅周辺からUPZ外の避難先までのルートも、地図上で表示する。主要ルートのほか、複合災害で発生した路面陥没や橋の崩落など、被災を考慮した迂回ルートを示す方針。

情報を利用者が確認したかどうか、チェックできる「既読機能」も備える。特に、早急な避難行動が必要なPAZの要配慮者の避難支援への活用を想定する。

このほか、市町村が発令した避難情報が自動的に画面に表示されるプッシュ通知機能で届くほか、事故の進展状況や登録地近くの空間放射線量などを随時発信する予定。

平時は、県原子力ハンドブックや避難退域時検査(スクリーニング)場所など、原子力防災の基礎知識や避難の手順などの情報を掲載する。

これまでの災害時の情報発信では、防災行政無線やメール、交流サイト(SNS)などを活用。ただ、同じ市町村でも地区により異なる避難先などを一斉に伝達することになり、住民からは「分かりづらい」との声も出ていた。

アプリ開発の事業費は2500万円で、全額を国の原子力発電施設等緊急時安全対策交付金で賄う。開発は筑波大発ベンチャーのハスキー(茨城県つくば市)に委託した。

東海第2原発では、広域避難計画の策定が義務付けられた半径30キロ圏の14市町村に約91万6千人が住む。既に同様のアプリを開発した鳥取県や鹿児島県では、ダウンロード数が伸び悩んでおり、開発後は普及が課題となる。

同課は「重大事故が起きた場合、状況が変化していく中で、個人に合わせた情報が提供できる」としている。

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