長崎原爆資料館リニューアル 専門家小委員会が始動 新たな展示方法について意見交わす

核情勢や被爆医療などについて意見を交わした小委員会の委員=長崎市、長崎原爆資料館

 被爆80年に合わせた長崎原爆資料館(長崎市平野町)のリニューアルに向け、専門的見地から課題や方向性を示す同館運営審議会の小委員会が、27日始動した。初会合の論点は「核兵器を巡る国際情勢」と「被爆医療や放射線」。外国人や若い世代に伝わる新たな展示を考える上でのキーワードとして「考えさせる展示」や「視覚に訴える展示」などが挙がった。
 小委員会は同審議会の委員20人のうち、核情勢や医療、歴史などに詳しい専門家7人で構成。論点は計5項目あり、秋ごろまでに会合を3~4回開く。
 核開発や廃絶の動きに関する現在の展示について、軍備管理や軍縮などに詳しい長崎大教授の西田充委員は「年表などでの事実関係の列挙にとどまっている」と問題点を指摘。めりはりを付けて核情勢や反核運動のポイントを説明し、「なぜ核軍縮が進まないのか来館者に考えさせる展示を充実してほしい」と述べた。
 長崎大原爆後障害医療研究所所長の中島正洋委員は「核兵器は長期間にわたり非人道的な影響を与える。身体的、精神的な影響を体系的に伝える展示が重要」と強調。医学的な説明をコンパクトに分かりやすく伝えるため、デジタル技術を活用して視覚的に訴える必要性も提言した。
 次回会合は来月の予定。論点は「原爆投下に至る歴史」と「若い世代に向けた未来志向の展示」で、過去の日本の侵略戦争などを巡る歴史認識も対象となる。長崎歴史文化博物館館長の水嶋英治委員は「博物館にはメッセージを伝えるという理念があるが、海外には政治的メッセージが強すぎる博物館もある。原爆資料館は日本の修学旅行生だけでなく、海外の旅行客や首脳も来る。ターゲットをどこに置くのか考えながら議論を進めたい」と述べた。

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