障害者の差別解消へ、県内全自治体が条例制定 全国初、誰もが住みやすいまちへ

 障害を理由とする差別の解消を目的とした条例が、県と35の県内全市町村で今年4月までに施行された。都道府県内の全ての自治体で条例が制定されたケースは全国で初めて。障害者の支援に当たる県内の関係者は「障害者の社会参加を一層進める上で、ここがスタート。行政の後押しも受けながら、障害の有無にかかわらず誰もが住みやすいまちづくりにつなげたい」と期待している。

 本県では、障害者差別解消法と同じ2016年4月に県の関係条例が施行された。県は16年度から、各職場で差別解消の中心的な役割を担う「心のバリアフリー推進員」の養成に全国で初めて取り組むなどしてきた。市町村では、17年4月の山形市を皮切りに条例制定が順次進んだ。寒河江市と山辺町が今年4月に施行し、全市町村に整った。

 内閣府によると、22年4月1日時点で、条例を制定している地方公共団体は164で、全体の9%。都道府県は79%が制定済みの一方、政令指定都市や中核市などを除く一般市は62で全体の9%、町村は45で同じく5%にとどまっている。

 県身体障害者福祉協会(安部真会長)は法施行前の15年から、県と市町村への要望活動を展開してきた。同協会の調査では、条例制定後の変化として「公共施設の手すりやスロープ、多目的トイレの設置などバリアフリーの施設が増えている」「差別や合理的配慮について市町村広報誌に掲載され、住民理解が少しずつ図られている」といった回答が、各市町村の身障者協会から寄せられた。

 県身体障害者福祉協会の黒沼祐蔵常務理事は「障害者が住みやすい街は、子どもにもお年寄りにも優しい街。あらゆる地域に障害者が住んでいるからこそ、生活に身近な市町村単位で条例がそろった意味は大きい」と強調する。一方、当事者にも健常者にも条例の内容などが十分に浸透しきっていない現状があるとし「行政と共に一層の啓発に努めていく」と話した。

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