「土用の丑(うし)の日」(30日)を間近に控え、茨城県内でウナギ商戦が活況だ。ウナギの稚魚「シラスウナギ」の減少や資材高騰の影響で仕入れ価格は高止まりし、値上げに踏み切った店舗も少なくないとみられるが、今年は週末とあってスーパーやウナギ専門店は売り上げ増に期待を寄せる。
「今年の夏は暑さが厳しいので、ウナギを食べて乗り切りたい」。イオンスタイル水戸内原(同県水戸市内原)を訪れた女性(55)は、既にウナギ専門店でかば焼きを予約済みだ。
同店は29日、ウナギ売り場を拡大し、国産や中国産など13種類を販売する予定。価格は数百円上がったものの、国産ウナギの予約は前年比約10%増加しているという。
ウナギの卸問屋直営の専門店「う女川(めかわ)」(同市島田町)も今年4月に値上げ。今年は29、30日が週末となることから、前年より多い700~800枚の販売を見込んでおり、清水玲子さん(66)は「土用の丑の日はお祭り。お客さまの『おいしい』を励みに頑張りたい」と意気込む。
連日の猛暑も需要を後押しする。京成百貨店(同市泉町)の地下1階にある鮮魚販売の「藤塚」の後藤光秋部長は、これまでの動向を踏まえ「ウナギは暑い方が売れる」と売り上げ増に期待を寄せた。
資源量の減少で取引価格の高止まりが続いているウナギ。養殖ウナギの生産団体「日本養鰻漁業協同組合連合会」は「燃料代や餌代の高騰も加わり、稚魚のシラスウナギの取引価格は年々上がっている」と語る。
水産庁によると、ウナギの国内供給量は2000年の約15万8千トンをピークに減少し、近年は5万トン程度で推移。中国経由などで輸入していたヨーロッパウナギはワシントン条約の規制対象で09年から貿易取引が制限され、養殖の大半を占めるニホンウナギもシラスウナギが急減しているという。
ほぼ天然の稚魚を育てている現在の養殖ウナギについて、農林水産省は50年までに全て稚魚から養殖する目標を掲げ、技術開発で生産コストの引き下げに取り組む。ウナギが食卓に身近な存在に戻るためには、稚魚の安定供給の実現が鍵を握りそうだ。