30日は「丑の日」 足利にはうなぎ屋が多い? 謎に迫ると...背景に「繊維と鳥」 【あなた発 とちぎ特命取材班】

香ばしいタレの匂いが食欲をそそる「うな重」(手前)と「とり重」

 30日は土用の丑(うし)の日。猛暑が連日続く今夏を乗り切るため、ぜひともウナギを食べたいところ。そんな中、読者から「あなた発 とちぎ特命取材班」(あなとち)に「なぜ、足利にはうなぎ屋が多いのか」との疑問が寄せられた。言われてみれば多い気もするが、実際はどうなのだろうか。謎を解くべく、栃木県足利市内のうなぎ屋を訪ね歩いた。

 まずはNTT東日本が2022年12月時点の情報を基に発行した電話帳で、「うなぎ料理店」として掲載されている店舗を数えた。全店舗が掲載されているわけではないものの、県内市町の中では足利市が17店舗で一番多く、次いで宇都宮市の11店舗、小山市の6店舗となっていた。足利の人口約14万人から考えると、確かに多い。

 さらに気になることが。電話帳に並ぶ同市内の「うなぎ料理店」の名前を見ると、17店舗中6店舗に「鳥」の字が付く。市内のうなぎ屋では「うな重」とともに「とり重」を提供している店も多い。うなぎ屋の多さと「とり重」には何か関係があるのだろうか。

■行商人のごちそう

 最初に向かったのは「鳥常本店」(通1丁目)。店名に「鳥」を冠する創業140年以上の老舗だ。女将(おかみ)の平山正子(ひらやままさこ)さん(53)に由来を尋ねると、「もともとは鳥料理屋だったから」との回答。店で鶏を絞め、調理して提供していたそうだ。うなぎ屋が多い理由について、先代の妻は「繊維の町として繁盛していた時、行商の人にウナギをごちそうしていた。渡良瀬川でもウナギが捕れた」と話していたという。

 同じく繊維産業が関連していると説明するのは、「鳥つね」(緑町1丁目)の2代目石川福次郎(いしかわふくじろう)さん(83)。「東京や大阪から織物の買い付けに訪れる舌の肥えた客の昼食として、そばやすしとともにうなぎ料理も需要があった」と説明する。また、うなぎ屋で修業した弟子らが、次々と独立開業したのも要因とみている。

 こちらも川魚料理が店の顔だが、店名に「鳥」が付く。うなぎ料理が売り切れた時などに鳥料理を出せるよう、卵を産まなくなった廃鶏を仕入れていたと振り返る。

■鶏肉にも合うたれ

 「魚政」(通3丁目)の3代目深野政昭(ふかのまさあき)さん(77)も、繊維産業と徒弟制度が関係するとの見方だ。同店も昔から鳥料理を提供している。深野さんは「うな重のたれが鶏肉にマッチしたのでは。ウナギが嫌いな人や値段の面からも選ばれたのかもしれない」と推測する。また「昔はうなぎ屋で卵を売っていた」そうで、うなぎ屋と鶏の密接な関係がうかがえる。

 足利にうなぎ屋が多いのは、繊維産業の隆盛が関係しているのは間違いなさそうだ。さらに鳥料理も楽しめるのは、足利ならではかもしれない。足利の歴史に思いをはせながら、ぜひ一度、ご賞味あれ。

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