官邸が「官低」化 健康保険証廃止巡り軌道修正 木原副長官疑惑も影 「河野さんも松野さんもはしごを外される」

 マイナンバーカードを巡る混乱で官邸が与党から突き上げを受ける場面が相次いでいる。故安倍晋三元首相や菅義偉前首相(衆院2区)時代の「政高党低」から一転、「官邸ならぬ『官低』」(自民幹部)の状態だ。岸田文雄首相の側近疑惑も影響しているとみられ、秋口に向けた政局に“夏休み”はなさそうだ。

 「医療関係者の意見を聞きながら考えていく」。来秋に紙の健康保険証を廃止してマイナカードと一体化させる政府方針を巡って岸田首相は27日、記者団から廃止時期の延期の可能性を問われて答えた。「来秋廃止が前提」としてきた回答から軌道を修正している。

 自民党内では萩生田光一政調会長や世耕弘成参院幹事長が見直しを主張。26日の参院審議では公明党の上田勇氏が「利用者ではなく行政の都合が前面に出ている。政府も一体感を欠く」と酷評するなど、与野党を挙げて「官邸たたき」(政府関係者)が続く。

 河野太郎デジタル相(15区)は28日の閣議後会見で延期を重ねて否定。松野博一官房長官も同日の定例会見で「総理は来秋廃止への国民の不安払拭(ふっしょく)を進めるとしており、これに沿い対応していく」とした。しかし国会内では「河野さんも松野さんもはしごを外される」(立憲民主党議員)とのムードが漂い始めている。

 政府方針を巡っては今週に入り、健康保険証に代わる「資格確認証」の期限外しや「サラリーマン増税」構想などが相次いで報じられ、松野官房長官が会見で「そのような事実はない」などと否定に追われている。「内外調整役の木原誠二官房副長官が自身を巡る疑惑の週刊誌報道で身動きがとれないことが影を落としている」(官邸筋)という。

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