ペーロン

 長崎の夏の伝統行事、ペーロン。「風物詩」といわれるが、出る方は真剣勝負。かつて知人がチームの主将を任され、プレッシャーのあまり胃潰瘍になったほどだ▲長崎ペーロン選手権大会は30日、コロナ禍を経て4年ぶりに長崎港内で開かれる。今回の一般レースには13チームが出場予定で、前回覇者の野母崎は、中止の年も練習を重ね再開に備えてきたといい、監督は「いけるんじゃないのかな」と自信ありげに話した▲気になるチームが一つ。南部の土井首。2014年大会で久々の2位に入り、以降、台風による中止を挟んで5大会連続2位の好成績を挙げていたが、20余年ぶりの優勝に手が届かないままコロナ禍へ▲その“強豪”土井首は今回、出場を見送った。実はコロナ禍前、すでに選手層が薄まり、平均年齢も上昇、存続のための若手育成が大きな課題だった。そんな矢先での3年連続中止で、チーム編成が困難となってしまったそうだ▲地域の人口減とコロナの波が伝統行事への参加を妨げたかたち。土井首の元主将は「まずは足元からチームづくりを考えたい」と再出発への胸のうちを教えてくれた▲おそらくは各チームとも似たような課題を抱えながら、郷里と伝統を大事に思って櫂(かい)をこぐのに違いない。再開を精いっぱい楽しんでほしい。(屋)

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