2代目に事業承継の“プロ”抜てき 平木工業・髙濵さん夫婦 急な世代交代も「勇気与える姿見せる」

平木工業を事業承継した髙濵有志社長(左)と美和副社長=長崎市

 長崎市三京町で産業廃棄物リサイクルを手がける平木工業は5月、経営者が世代交代した。創業者でもある平木實男さん(79)が体調を崩し、義理の息子、髙濵有志さん(49)を2代目社長に抜てき。髙濵さんは事業承継を支援する専門家でありながら、自ら承継を実践することになった。
 1974年設立の同社は2022年度売上高約8億円、従業員数約100人。最新鋭の粉砕機器を導入するなどして12億円以上の有利子負債を抱えている。高齢の平木さんは社内外に後継者を探したが、「親族以外に託せないほど経営状態が悪化していた」(髙濵さん)。入院前に「娘と一緒に後を任せたい」と髙濵さんに懇願した。
 その約2週間後の株主総会で社長を継いだ髙濵さんは「産廃業界の門外漢」。中小企業庁認定の経営改革等支援機関で株式会社「経営支援センター」の代表として、中小企業の事業承継を支援してきた。国内最大級マッチングサイト「TRANBI」で専門家として紹介されている。
 二足のわらじを履くことになり、平木工業社長として取引先や金融機関との交渉、従業員との意識合わせ、顧客開拓などに奔走中。「急な引き継ぎで苦労が多い。5~10年かけるのが理想」と実感している。
 取引先や他の株主に「バランスが取れた経営」と認めてもらうため、妻美和さん(54)が社長解任権を持つ筆頭株主兼副社長に就いた。美和さんは二十数年前まで家業の同社で働いていた。結婚、子育てを経て今回復帰し、業界経験の無い夫と従業員の間を取り持つ役割を担っている。
 社長の高齢化や後継者不在は、県内の中小企業の多くが抱える問題。髙濵さんは「雇用を維持し経営を再建したい。悪戦苦闘しながら、それを実現する姿を多くの経営者に見てもらい、勇気を与えられれば」と願う。
 事業承継についての相談は経営支援センター(電095.895.5950)。


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