「ふるさと納税」ルール変更、自治体困惑 経費項目拡大に「削減限界」

 10月から「ふるさと納税」の寄付募集にかかる経費の項目が拡大するルール変更に対し、県内自治体で困惑が広がっている。既に多くの自治体は経費上限(50%)に近い枠組みで運用しているためで、項目拡大により対策を講じなければ上限を超えるのは必至だ。人口が少ない地方都市では寄付金を「財源の柱」と位置付けている自治体も多く「経費削減には限界がある。返礼品そのものを見直す必要もある」との声が上がっている。

 これまで経費に該当していたのは返礼品の調達や配送、広報などだった。過度な返礼品競争を防ぐため、総務省は寄付の受領証明書の発行費や、ふるさと納税した寄付者の確定申告が不要となる事務手続きに要する費用なども対象とした。

 「昨年度は経費を48%台に抑えられていた。残りの2%分を広告費に投じ、さらなるPRを図ろうとしていたのに…。厳格化に戸惑いを感じた」。寄付額が30億円を超える酒田市の担当者はそう話す。県や鶴岡市などは対応策として広告費の削減などを挙げる。とはいえ他に見劣りしない返礼品を用意するためにも、県や市町村は品物や寄付額の見直しは“最終手段”との認識だ。

 年度途中のルール変更にも難しさがある。米沢市は「なぜ10月からの変更なのか。予算編成前ならば経費を抑える努力ができるのだが」と指摘。東根市は「(寄付を仲介する)ポータルサイトなどの契約は年度単位。自治体への影響が大きい変更にもかかわらず、事前周知がなく唐突すぎる」との受け止めだ。

 ふるさと納税制度は事業者の販路拡大にも寄与してきた。新庄市が危惧するのは事業者への影響で、「コロナ禍で疲弊している業者も多い。(返礼品の見直しで)最悪の場合は廃業の可能性もあるのではないか」とする。

 多額の寄付金を集める市町村ほど、関連業務の経費は膨らむ。2021年度は約15億円だった河北町の担当者は「これまでも50%ぎりぎり。(ルール変更で)少し切り詰めるくらいでは解決できない。少しでも良い品を渡そうと頑張っている自治体ほど厳しい」と苦しい胸の内を明かす。22年度は40億円を突破する見通しの山形市は、「まじめにふるさと納税制度を運用している自治体が損をするようなことにはなってほしくない」と要望した。

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