子どもを守った教員へ手厚い補償を…戸田・中学校刺傷事件の「その後」受け、有志団体が埼玉県に署名提出

埼玉県教育局に署名を提出する教員団体「ティーエススリー」代表の加藤豊裕さん(左)=27日、県庁

 埼玉県戸田市立美笹中学校に元少年が侵入し男性教諭を刃物で刺傷した事件を巡り、全国の教育関係者などでつくる団体は27日、子どもの命を守るために犯罪被害を受けた教員への補償を拡充するよう求めるオンライン署名2万6240筆を大野元裕知事と日吉亨教育長宛てに提出した。

 事件を巡り、埼玉新聞が今月、被害者の教諭が「県教委に『公務災害補償の対象は治療費など。それ以外は民事なので、自分で加害者と示談交渉するしかない』と言われた。交渉の道筋を示してほしかった」と訴えていると報道。それを受けて全国の教員ら9人が新たな団体「ティーエススリー」を立ち上げ、21日から署名サイト「チェンジ・ドット・オーグ」で署名を集めた。

 同団体代表で、愛知県内の公立小学校教諭の加藤豊裕さん(45)はさいたま市浦和区の県庁前で栃木県の教諭と2人でデモを行い、「公務中の被害なのに100%の補償が得られないなら子どもを守る気持ちが鈍る。国が制度を変えるべきだが、まず埼玉県に良識を見せてほしい」と訴えた。署名を受け取った県教育局教職員課の担当者は「非常に多くの方からの署名で重く受け止めており、内容を確認したい」と話した。

 事件での対応について日吉教育長は県議会の一般質問で、「詳細な説明をしたが、法的相談窓口の周知に課題があった」と説明。今月中に不審者侵入を想定したマニュアルを策定するとしている。

 加藤さんは「子どもを守った教員への手厚い補償は市民の理解が得られる。学校侵入事件は多く、日本中の関心が埼玉の対応に集まっている」と強調した。

© 株式会社埼玉新聞社