小浜を盛り上げたい 鮮魚スーパー3代目店長の中村さん 昨秋Uターンし若い発想で全面改装 長崎

いけすから取り出したワタリガニを見せて客に話しかける中村さん=雲仙市小浜町

 いけすを備え“鮮魚スーパー”として地域の食を33年間支える長崎県雲仙市小浜町の「フレッシュマートナカムラ」が今月、全面改装した。3代目の店長を継いだ中村庄吾さん(31)は昨年秋、沖縄からUターン。「店を拠点として町を盛り上げたい」と目を輝かせている。
 大小さまざまないけすが12台。改修して店内から見えるようになった。タイやアラカブが泳ぎヒオウギガイやサザエが並ぶ。「けさ仕入れたワタリガニ。新鮮ですよ」。中村さんの声が真新しい店内に響く。冷蔵食品の品数も2割増えた。高齢の常連客のほかに子ども連れの30、40代も来店。「幅広い世代を呼び込みたいという改装の狙いが当たった」と喜ぶ。
 同店は祖父、和昭さん(90)が地元の新鮮な魚介類を約50年前に移動販売したのが始まり。1990年、現在地にオープンした。注文に応じてその日にさばく刺し身や鉢盛りが店の目玉。父、政広さん(65)がとれたての海の幸を求め、毎朝3時半に起きて長崎市内の魚市場へ仕入れに行く。
 中村さんは、地域のために毎日惜しみなく働く政広さんを誇りに思い、パート従業員や客にかわいがられて育った。「店は商品を売るだけでなく、たわいもない会話ができる温かい場所。失いたくない。いつか継ぐ」。高校を卒業後、沖縄県の琉球大で建築やまちづくりを学ぶ中で、その思いが強くなった。那覇市の建設会社で中古物件改修や新店舗の運営業務を任されてからも「この経験がスーパーの経営に生きる」と考え、仕事に打ち込んだ。
 昨年2月、政広さんから「戻ってこれんか」と電話があった。新型コロナの影響で旅館からの鉢盛り注文が激減。店頭売り上げも徐々に落ち込み「庄吾なら若い発想で経営を立て直してくれるんじゃないか」と頼まれた。退職して昨年10月に帰郷。政広さんは「過疎化が進み廃業も考えるほど厳しかった。跡を継いでくれて助かった」と感謝する。
 店は押しずしなど手作り総菜が充実しており、客の要望に応え宅配も担う。高齢化が進む町にとって貴重なよりどころ。30年以上利用する同町の田中千鶴子さん(79)は「刺し身が新鮮で弁当もおいしい。頼めば商品を運んでくれてありがたい」と話す。
 季節のイベントとして、店内でウナギのかば焼きを予定。「市内外からたくさんの人が店に集まって話し、笑顔になってほしい。いろいろと企画してこの町をさらに住みやすくしたい」。未来のまちづくりを想像しながら、目じりを下げて接客に励む。


© 株式会社長崎新聞社