パンデミックが日本の犬と猫の行動に及ぼした影響を調査した研究結果

パンデミックが家庭の犬や猫に及ぼした影響を調査

COVID-19のパンデミックは世界中でロックダウンを引き起こし、期間中の人々の在宅時間は飛躍的に長くなり、それをきっかけに犬や猫をペットに迎えた人も多く、パンデミックはペットブームの引き金にもなりました。

室内飼いを前提とした猫と違ってロックダウン中に迎えられた犬は、飼い主以外の人間や他の犬との接触がないことで多くの問題を抱えるようになり、「パンデミックパピー」と呼ばれるこれらの犬の行動について、多くの調査や研究が行われるようになりました。

しかし、パンデミック以前から飼われていた犬や猫についてはどうなのでしょうか?飼い主の在宅時間を含めて、犬や猫たちの生活が変化したことで影響は現れたのでしょうか?

この点について、麻布大学、京都大学、東京農業大学、上智大学、日本学術振興会の研究チームが調査を行ない、その結果が発表されました。

パンデミック前後の犬や猫についてアンケートを実施

調査はオンラインアンケートを用いて実施され、参加者はSNSや口コミを使って募集された20歳以上の犬または猫の飼い主で、犬の飼い主577名と猫の飼い主612名から回答を得られたといいます。

質問項目は、回答者(飼い主)の性別や年齢などの基本情報に加えて、通常の就労または就学形態とパンデミックによる就労または就学形態の変化の有無、メンタルヘルス測定のための質問、身体活動を測定するための質問がありました。

犬または猫についても基本情報の他に、パンデミック前後での交流頻度(遊び、散歩、撫でる、話しかける、おやつなど)の変化が質問されたそうです。

犬や猫の気質や行動の変化については、犬の場合にはC-BARQ、猫の場合にはFe-BARQを用いて、パンデミック前とパンデミック後の2パターンについて回答が求められました。C-BARQとFe-BARQとは、行動特性を評価するための標準化された質問票です。

飼い主の在宅時間増加のプラスとマイナス

過去に実施された諸外国の調査と同様に、パンデミックによるロックダウンの前後で回答者のほとんどが生活の変化を経験し、ペットとの交流の頻度が増加したと答えました。

猫の場合、在宅時間が増えたのに交流頻度に変化がなかった飼い主の猫は、交流頻度が増加した飼い主の猫よりも、飼い主の注意を惹こうとする行動が多く見られるようになりました。

また、交流頻度に変化がなかった飼い主の猫は、日中は活動的に遊ぶのに比べて夕方以降は活動的ではなくなっていました。

これは飼い主の注意を惹くために遊び行動を増やした可能性が考えられます。在宅時間が増えて猫との交流頻度も増やした飼い主の猫では、注意を惹くための行動は増えませんでした。

これらのことは、猫はパンデミックの前後で飼い主との交流を求める頻度が増加した可能性を示しています。その一方で、猫は必ずしも飼い主の要求に沿った行動をしなかったこともわかりました。これは猫らしい独立性の現れとも考えられます。

飼い主の在宅時間の増加は、猫にとって100%歓迎するものではなかったことを示す回答もありました。猫との交流を増やした飼い主の猫は、過剰なセルフグルーミングなどのストレス関連行動の増加、遊び時間の減少が報告されました。

飼い主主導の交流が猫にストレスになったことの他に、テレワークやオンライン学習など、聞きなれない音の刺激がストレスになった可能性も考えられます。

犬では、飼い主の在宅時間が増加した場合に、より活動的になることがわかりました。また飼い主の在宅時間が増えた犬では、知らない人や他の犬に対する攻撃性や恐怖心が低いという回答が目立ち、これは知らない人や他の犬に会う機会が減ったことと関連していると思われます。

その一方で飼い主の在宅時間が増えた犬では、飼い主や同居犬に対する攻撃性や接触過敏性が高くなったこともわかりました。これは散歩や他の犬との交流の機会が減ったことがストレス要因になったためという可能性が考えられます。

飼い主のメンタルヘルスが低調な場合、犬と猫両方で分離不安と接触過敏を示す割合が高いこともわかりました。犬では興奮性の高さと訓練性の低さ、猫では攻撃性の高さも飼い主のメンタルヘルスに関連していました。

これは飼い主の精神的な健康状態の悪さがペットにとってストレスになったという可能性と、生活の変化にストレスを感じたペットの行動が飼い主のメンタルヘルスを低下させたという両方の側面が考えられます。

飼い主のメンタルヘルスとペットの行動変化の関連にはまだまだ議論の余地があり、さらに研究が必要であるとのことです。

まとめ

COVID-19のパンデミックが、日本の飼い主のライフスタイル、メンタルヘルス、ペットの行動、飼い主とペットの相互作用に影響を与えたかどうかを調査したアンケートについてご紹介しました。

飼い主の在宅時間が増加したことで、飼い主の注意を惹こうとする猫や活動的になる犬といった面がある一方で、ストレス関連行動や攻撃性の増加というマイナス面も報告されました。

これらのことは、飼い主は日頃から自分のストレスの解消を愛犬や愛猫に一方的に求めるのではなく、自分とペット両方の心身の健康と福祉の向上を心がける必要性を示しています。

愛犬や愛猫の健康と幸せのためには、自分自身の心身のメンテナンスと管理が重要であることを改めて感じさせられます。

《参考URL》
https://doi.org/10.3390/ani13132217

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