【MLB】バーランダー獲得も・・・アストロズのデッドラインは低評価

日本時間2日の7時に終了したトレードデッドライン。最終日に動いた最大の大物がメッツのジャスティン・バーランダーだった。

ドジャース、オリオールズらが関わった争奪戦の末、3度のサイヤング賞を誇るベテランを射止めたのは、昨年まで所属した古巣のアストロズだった。

熾烈な地区優勝争いを繰り広げるレンジャーズがシャーザーなどを獲得する中、バーランダーの獲得は強力な援軍になることは間違いない。ただ、トレード補強の方針と差し出した対価には疑問が呈されている。

【動画】バーランダーのメッツでの最後の登板は7月26日のヤンキース戦 映像はこちら

まず、補強の方針としてそもそもアストロズが大物の先発投手を必要としていたのかには疑問が残る。

アストロズの先発ローテの防御率はメジャー3位と、非常に優秀な数字を残している。今季はルイス・ガルシアらの離脱に見舞われながら、ハンター・ブラウンやJP フランスといった新人が台頭。エースのフランバー・バルデスもサイヤング賞レースに加わる活躍を見せ、2日のガーディアンズ戦でノーヒッターを達成している。

層の薄さは懸念されていたものの、実績あるホセ・アルキディーの復帰も近く、獲得するのはローテーションの後ろを埋められる安上がりのレンタルでも良かったはずだ。

それ以上に先発ローテと比べれば平凡なクオリティだった打線やブルペンの補強に動くべきだった、との声もある。

そして、トレード成立時に驚きの声が上がったのが、対価の大きさである。

アストロズが放出したのは球団No.1・2の有望株であり、昨年ドラフト指名したドリュー・ギルバートとライアン・クリフォードの2人。ギルバートは1巡目指名の大学生、クリフォードは11巡目指名ながら、アストロズが126万ドルもの契約金を提示して大学進学を翻意させた高卒の逸材だった。本格的なプロデビューとなった今年、2人とも凄まじい活躍で既にマイナーを1階級ずつ昇格しており、鰻登りに評価を上げていた。ギルバートは既に『MLB.com』のプロスペクトTop100にランクインしており、クリフォードも弱冠19歳でA+で活躍していることを鑑みれば、今後球界屈指の有望株として認知されていくことだったろう。

そして、バーランダーが全盛期のクオリティならば莫大な対価にも釣り合ったかもしれないが、今のバーランダーのパフォーマンスには不安が残るのも現実だ。

バーランダーは今年、肩の故障もあって例年ほどのパフォーマンスではない。どの球種も軒並み1キロほど遅くなっており、K/9(9イニングあたりの奪三振)は7.73で、復活を遂げた2016年以来では最悪の数値と、支配力は全盛期ほどではなくなっている。

ただ、莫大な対価に見合うかはともかくとして、バーランダーは依然としてバーランダーであり、今年のアストロズを大いに助けるはずだ。慣れ親しんだヒューストンと球団に戻って、2017年に最初にアストロズに加入したときのように再び復活劇を見せる可能性もある。

しかし、アストロズの将来に大きな影を落とすリスクがあることは間違いない。

アストロズは2017年の世界一チームを作り上げたジェフ・ルーノウGMがサイン盗みスキャンダルで去って以来、ジム・クレインオーナーが編成への影響力を増している。昨年の世界一に導いたカイル・クリックGMを解任し、その流れは顕著になった。今回のバーランダー獲得も、バーランダーとの縁故が深いオーナーの意向が深く絡んでいるとされる。

かつての有能なフロントが残した遺産によって今に至るまで王朝であり続けるアストロズだが、行先には不安も残す今年のデッドラインとなった。

© 株式会社SPOTV JAPAN