社説:災害拠点病院 浸水止める対策を急げ

 「災害拠点病院」は、地震などの災害発生時に、24時間態勢で傷病者を受け入れ、緊急対応をする医療機関である。

 その3割近くが、国などが設定した「洪水浸水想定区域」に立地していることが、厚生労働省研究班の調査で分かった。

 災害時の中心施設が、大きな浸水リスクを抱えている。早急に、有効な対策を講じていかねばならない。

 災害拠点病院は、自家発電機の保有、水など医療物資の備蓄、災害派遣医療チームの整備といった要件を満たした施設で、都道府県が指定する。今年4月現在、全国に770カ所ある。

 1995年の阪神大震災を契機にして、これまでは主に地震による被害を想定しながら、整備されてきた。

 しかし、近年は豪雨が頻発しており、水害への対応が強く求められるようになった。

 2019年の台風19号は東北、関東地方に大きな被害をもたらした。福島県郡山市の総合病院には濁流が押し寄せ、医療機器の一部が使用不能となった。外来診療の再開に2日、救急外来は9日を要し、建物や機器の損害は約11億円に上った。

 ハザードマップで3~5メートルの浸水想定区域にあったのに、敷地のかさ上げは1.5メートルにとどまっていたのも、被災につながったとみられている。

 その後、会計検査院は、一部の災害拠点病院で発電機などの浸水対策が不十分な状態にある、と指摘している。浸水による被害を、細心の注意を払って避けていくことが、何より必要だ。

 厚労省研究班の調査で、洪水浸水想定区域に立地していた災害拠点病院は、昨年8月時点で221カ所に上った。

 京都府は13病院あるうちの7カ所(54%)、滋賀県は10病院のうち5カ所(50%)が該当した。

 災害拠点病院に指定されていない7406の病院の中では、2044カ所が同区域内にあるとされている。

 浸水対策が適切かどうか、各地の関係者が、しっかりと点検しておくことも大事である。

 厚労省は、同区域内の災害拠点病院の指定に、止水板の設置や自家発電機の高所移設などの新たな要件を来春に適用すると、都道府県に通知している。

 費用面で、対応できる病院ばかりではなかろう。国などは、財政支援も検討すべきだ。

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