翼けがしたコウノトリ、福井県が異例の救護 「助けてほしい」住民の思い踏まえ特別措置

翼にけがを負ったコウノトリを捕獲する福井県の職員=8月2日、福井県鯖江市川去町

 福井県は8月2日、同県鯖江市川去町の用水路で右翼にけがを負い飛べなくなった状態で見つかった国の特別天然記念物コウノトリの雄を救護した。県内に治療施設がないため、兵庫県豊岡市の県立コウノトリの郷公園に同日搬送された。後日診断と治療が行われる。

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 福井県は、けがをした野生鳥獣について自然の営みに介入しないことを原則としており、今回の救護は異例。「地域住民の『助けてほしい』という思いを踏まえた特別な措置」としている。

 福井県自然環境課や同県自然保護センターの職員ら6人が2日午後3時20分ごろ、鯖江市川去町の田んぼで網を使って保護した。救護に当たった郷公園の獣医師によると、コウノトリは右翼の骨が折れているとみられ、弱っている様子。応急処置として傷の消毒などを行った。診断によっては翼を切断する可能性もあるという。治療し状態が安定した後、福井県に戻され、越前市中野町の飼育ケージでリハビリを行う予定。

 鯖江市の現場近くに住む男性(66)は「救護されてよかった。けがの状態が心配だが、治療を受けて元気になってほしい」と話した。

 福井県は鳥獣保護管理事業計画で、絶滅の恐れのある野生鳥獣がけがをしている場合、交通事故や釣り糸が絡まるなど人為的な行為が原因で、治癒が見込める場合に救護すると定め、「それ以外は自然の摂理に任せる」としている。

 今回は原因が分からず、野生復帰も難しい可能性がある。県には1日までに、県内外から「かわいそう」「救護してほしい」といった電話が20件以上あったという。

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 鯖江市によると、7月28日、けがをしたコウノトリがいると連絡があり、足環から雄のJ0684(愛称・わくわく)と判明した。今年5月に同市吉川地区の巣塔でふ化し、7月24日に巣立ちが確認されたばかりだった。

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