「努力していかなければ信仰心が薄れていく」お化け屋敷に宿坊体験…お寺発のイベントが多いワケ【現場から、】

最近では、お寺での「集客イベント」も珍しくありませんが、なぜ、お寺がイベントを開くのか、と気になったことありませんか?

【動画】「努力していかなければ信仰心が薄れていく」お化け屋敷に宿坊体験…お寺発のイベントが多いワケ【現場から、】

かつては、コンビニよりも多いといわれた寺ですが、近年、人口減少や後継者不足により、その数が激減しています。お寺発のイベントの背景には「どう寺を継続していくか」という必死の闘いがありました。

静岡県袋井市の法多山尊永寺。法多山といえば厄除け団子ですが、実はこの団子を売っているのは寺とは別の団体です。

<法多山尊永寺 大谷純應住職>
「基本的にはお金はお寺の方には入ってきてはいない」

いま、法多山尊永寺では、お寺を維持していくためのある試みを行っています。

<山口駿平記者>
「怖い怖い」

その試みとは…。

約1300年前に建立された袋井市の法多山尊永寺。いま、夏休みにぴったりのイベントが行われています。

<法多山尊永寺 大谷純應住職>
「その僧侶宿舎、いわくつきの建物、簡単にいってしまうと呪われた場所になってしまっているんです」

法多山が7月から始めたのは、お化け屋敷「呪われた僧侶宿舎」です。

<山口駿平記者>
「怖いよ~」

全国屈指のお化け屋敷プロデュ―サーが監修しているということで、そのスリルは満点でした。一般的に寺の収入源は主に檀家からのお布施ですが、檀家が決して多くないという法多山は、別のカタチで収入を得る方法を模索しています。しかし、このお化け屋敷は収益にはつながっていないそうです。

<法多山尊永寺 大谷純應住職>
「赤字か、黒字か、っていう話でいうと実際には赤字は赤字ということなんです。諸々いろんな経費を考えていくとみなさまから入場料をいただいていますけど、それだけでは屋根が葺けない(利益が出ない)部分があります」

利益は出ないというお化け屋敷ですが、開催は2023年で4回目。ほかにも写真映えすると話題のアンブレラアートの展示や風鈴祭りといった無料の催しも行われています。名物の厄除け団子の売上げも寺の収益にはなりません。それにもかかわらず、なぜ、法多山はこのような催しを行うのでしょうか。
それは、参拝客を増やす呼び水にするためだといいます。法多山ではイベントを目的にして、寺を訪れた人にお守りなどを買ってもらうことで経営の安定化を図っているというです。

<お守りを購入した人>
「風鈴を見に来ました」
Qなぜお守りを買った?
「せっかくだし、そうせっかくだし」

かつてはコンビニよりも多いといわれていた寺。しかし、日本仏教協会によりますと後継者不足や宗教離れを理由に実質的に活動している寺は、この10年で1万件ほど減少しています。そのため、仏教文化を守るためにも安定した寺の経営が課題になっているのです。

浜松市北区引佐町の方広寺です。この寺でも参拝客を増やすための催しを実施しています。

<お坊さん>
「一つには功の多少を計り、彼の来処を量る」

<宿泊客>
「一つには功の多少を計り、彼の来処を量る」

方広寺が行っているのは、寺に宿泊して僧侶と同じ生活をする「宿坊体験」です。うなぎのかば焼きのように見えるのは、山芋や蓮根でつくった精進料理。宿泊客は日常から離れるため、費用を払って、寺で過ごします。翌朝は午前6時から座禅体験。宿泊客は自然の音を聞きながら、心を落ち着かせていました。

<参加客>
「きつかったんですけど、自分と向き合うっていうことができたんじゃないかな」

<方広寺 巨島善道教学部長>
「お寺のファンになっていただいて、その方にまた来ていただけるのももちろんそうだし、来てくださった方がお友達を誘ってまた来てくださって『あそこのお寺いいよ』ってなることがとてもいいことかなと思いますね」

法多山の住職、大谷さんは、自ら喜んで財産を差し出すことを意味する仏教用語「喜捨」の気持ちを参拝客に持ってもらうためにイベントなどを実施していると語ります。

<法多山尊永寺 大谷純應住職>
「『喜捨』っていう思いでみなさんが(お布施を)出して頂けるような物を提供する努力は、実はお寺がやらなければいけないことなので、やっぱり我々が努力していかなければ信仰心が薄れていくし、信仰心が薄れれば、当然お寺はどんどん廃絶していく。仏様の教えを守るということと同時に重要なのはお寺を健全に経営していく」

<井手春希キャスター>
お寺は当然身近にあるものというイメージがありましたが、やはり企業と変わらず経営をしていかなければいけないんですね。

<山口駿平記者>
法多山の住職の大谷さんは現在の寺を取り巻く環境について「日本の仏教の1500年の歴史の中でも最大の危機を迎えていると思う」と語りました。一方で、「このような状況は人々と寺の新しい関係が始まるチャンスでもある」とも期待を込めていました。

© 静岡放送株式会社