原爆、戦争の悲惨さ 美術で表現 「ながさき8.9平和展」 長崎県美術館で6日まで

原爆の惨劇を表現した立体作品などが並ぶ=県美術館県民ギャラリー

 美術作品を通して世界平和への願いを表現する市民手作りの美術展「ながさき8.9平和展」(同展企画委員会主催)が2日、長崎市出島町の県美術館県民ギャラリーで始まった。原爆や戦争の悲惨さ、日常の幸せなどを題材に、それぞれの思いを込めた絵画、写真、立体作品などが展示されている。6日まで。
 長崎原爆の日を原点とする美術界の平和運動として1980年に始まり、44回目。年齢や国籍などに関係なく無審査で展示する形式で、国内外から160点が集まった。被爆者の女性が被爆前後の記憶をたどりながら当時の様子を18枚の水彩画にまとめたものや、幼稚園児が描いた平和祈念像、3世代そろって出品した家族の作品など個性が光った。
 西彼時津町左底郷の塚田遼平さん(79)の油彩画は、旧浦上天主堂の被爆遺構を中央に配置し、自身が撮った天主堂解体前の写真や被爆マリア像、当時の女子学生の絵で構成。塚田さんは「残されたものからイメージを広げた。絵を見て原爆のことを理解してもらうきっかけになれば」と語った。
 西彼長与町三根郷の木村瞳子さんは、祖母と友人が折り紙でくす玉を作る様子を日本画で表現。「おしゃべりしながら折り紙を折る穏やかな時間を描くことで、平和を伝えたい」と制作したという。
 同展企画委事務局のウエダ清人さん(70)は「ウクライナ情勢を思い、世界平和を願う作品が目立った。一人一人は小さな力だが、みんなで表現することが大事」と話した。

© 株式会社長崎新聞社