アーセナルのイングランド代表GKアーロン・ラムズデールが、昨シーズンに自身の家族に起きた悲劇を初めて告白した。
2021年夏にシェフィールド・ユナイテッドから加入し、すぐさまガナーズの守護神に定着したラムズデール。昨シーズンはシーズンを通して安定したパフォーマンスを披露し、プレミアリーグ2位フィニッシュの立役者の一人となった。
最終的に優勝は逃したものの、充実と言えるシーズンを過ごしたかに思われた25歳だが、プライベートでは妻の流産という悲劇を経験していた。
ラムズデールは『The Players' Tribune』への寄稿で、今年1月15日に2-0で勝利したプレミアリーグ第20節、トッテナムとのノースロンドン・ダービー直前に妻が第一子を流産していたことを告白。
その際にミケル・アルテタ監督を始め、チームスタッフやチームメイトからの温かなサポートへの感謝を綴っている。
「昨シーズンはタイトルには届かなかったけど、8位、5位、2位と順位を上げてきた。僕らはクラブで築いている文化が大好きだ。グーナーになるには素晴らしい時期だね。そして個人的なレベルで言えば、昨シーズンに自分を支えてくれたチームメイト、監督、スタッフ全員、そしてサポーターに感謝しなければならない」
「残念ながら、ここからは事態が少し深刻になる」
「僕らの生活には、一般の人が知らないところで起こっていることがあり、この1年は僕と家族にとって感情のジェットコースターのような年だった。 プレミアリーグの順位表の頂点に上り詰め、初めてのワールドカップに出場したという最高の気分の後、妻と僕は第一子の妊娠を知ったんだ」
「ワールドカップの後、ミケル(・アルテタ監督)が僕に数日余分に休暇を与えてくれ、僕らは短い休暇を過ごしたんだ。それは本当に僕らの人生で最も幸せな時間だった。そして、そうだね…。このことを簡単に話すことはできないけど、人々に知ってもらうことが重要であると感じているよ」
「帰国の飛行機の中で妻が流産したんだ…」
「ロンドンまでの6時間のフライトの苦痛は、今でも言葉では言い表せないよ。僕はただ、世の中の人々に、たとえそういった経験をしたとしても、決して一人ではないことを知ってもらいたいんだ」
「休暇から戻ってきたとき、何が起こったのかを多くの人には話さなかった。それを話したのは家族とチームメイト、そしてもちろんミケルだけだ。彼はすべてにおいて素晴らしかった」
「タイトル争いの真っただ中で、クラブに大きなプレッシャーがかかっていた時期だったけど、彼は僕にすべてに対処するために少し休暇が必要かどうか尋ねてくれた。ミケルは僕と家族が大丈夫かどうかを確認するため、それ以上のことをしてくれた」
「僕にとって彼は本当の意味でのマネージャーなんだ」
「僕らは常にすべてのことについて意見を一致させられるわけではない。時にはフットボールについて気色ばんだ会話をすることもある。だけど、彼はプレーヤーのことをとても気にかけていて、僕ら家族の悲しみにどう対処してくれたかを考えると、永遠に尊敬することになるよ」
自身と家族の身に起きた悲劇を包み隠さずに明かしたラムズデールでは、そのトッテナム戦後に起きた事件についても言及。
試合終了直後、ラムズデールはドリンクボトルをゴール裏スタンド近くの看板のところまで取りに行ったが、ここでスタンドの前にやってきたトッテナムのサポーターがラムズデールの背中を蹴る愚行を働いた。その後、35歳の男性は警察の捜査の末に逮捕され、起訴されていた。
試合後には「まさか仕事場で暴行を受けるなんて、受け入れることはできない」と憤りを示していたイングランド代表GKだが現在は態度を軟化。「友達になれるかもしれない」と寛大な姿勢を示している。
「3日後、僕らはダービーでスパーズと対戦していたけど、僕にとってそれが物事から気を紛らわす唯一の方法でもあった。フットボールはいつも僕の逃避の方法でもあった。だから、監督にプレーしたいと伝えた」
「あれ以上に素晴らしい夜はなかったよ。たくさんのライトの下で僕らは2-0で勝利し、アウェイのファンは完全に熱狂していた。試合を振り返ってみると、最後のゴールキックの瞬間に自分が満面の笑みを浮かべているのが見えるよ。ゴール裏にドリンクボトルを取りに行ったんだけど、まさかトッテナムファンに背中を蹴られるなんて100万年もの間考えたこともなかったよ」
「これまでイングランドのリーグの相手ファンととてもスパイシーな冗談を言い合ってきた。僕は多くの人が想像できるすべての(良くない)ものと呼ばれてきた。だけど、あのように一線を越えたことは一度もなかった。ドレッシングルームに戻ったとき、警察の事情聴取のために連れ出されたから、仲間と祝うこともできなかったのを覚えているよ」
「承知の通り、僕はそのようなことをした男に同情しそうになったよ。なぜなら、もし彼が僕のことを人間として知っていて、僕が当時経験していたことだけを知っていたら、彼は決してそんなことをするはずがない、と思ったからだ。ある日偶然会って、フットボールについて話せたら、きっと友達になれるだろうね」