福井県南越前町の3集落に「輪中堤」を整備へ 2022年8月の大雨被害から1年、復旧歩む

鹿蒜川(右)からの濁流で茶色く覆われた集落=2022年8月5日、福井県南越前町今庄(福井新聞社ヘリから撮影)
土砂や流木が取り除かれた集落=2023年7月16日、福井県南越前町今庄(福井新聞社ヘリから撮影)

 福井県南越前町や奥越を中心に甚大な被害をもたらした2022年8月の記録的大雨から1年。川の決壊や氾濫が相次ぎ、住宅被害が県全体で346棟に上った。過去20年では04年の福井豪雨に次ぐ被害を踏まえ、南越前町では県と町が連携し「鹿蒜川流域防災・減災プロジェクト」に着手。集落を堤防で囲う「輪中堤(わじゅうてい)」を整備するなど、24年度にかけてハード・ソフト両面の対策を進める。

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 22年8月4日から5日にかけての大雨により、南越前町今庄のJR北陸線踏切は水没し、北陸自動車道下り線の敦賀トンネル入り口付近は大量の土砂が流入。JR北陸線、北陸道、国道8号といった嶺北と嶺南を結ぶ交通網がまひした。

 住宅被害は、鹿蒜川や河野川で護岸損壊や堤防決壊が相次いだ南越前町で全壊8棟、半壊53棟、一部破損3棟、床上浸水75棟、床下浸水92棟の計231棟に上った。勝山市では皿川の氾濫などで半壊17棟、床下浸水48棟の被害が出た。大野市も床上浸水5棟、床下浸水12棟が確認され、3市町で県全体の住宅被害の9割を占めた。

 鹿蒜川流域防災・減災プロジェクトでは、南今庄、下新道、上新道の3集落で「輪中堤」を整備する。川と住宅の間に盛り土して堤防を造る計画で、24年度中の完成を目標に現在、住民説明や用地取得の手続きなどを進めている。下流域では、昨夏と同程度の雨量を想定し河道を拡幅する。集落への土砂流入を防ぐため、鹿蒜川の支線に砂防施設を5カ所整備する。

 中小河川への水位計や河川監視カメラの設置の遅れも課題として浮き彫りになり、県は県全体で増設に力を入れ、本年度は県管理河川の計40カ所に設置する。

 農地や水路への土砂流入、林道ののり面崩壊など農林業も大きな被害を受けた。県によると、被害額は農業用施設で62億円(7市町)、林業関係で40億円(8市町)に上り、復旧作業が急ピッチで進められている。

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