青柳翔「“セフレ”とはある種、とても美しいものだと思う」

(撮影:加治屋誠)

「“セフレ”という言葉自体、ネガティブなイメージを持たれる方がほとんどだと思います。ただ、世の中にはその人たちにしかわからない関係性というものがあって、ある種、とても美しいものでもあるということを知ってほしいです」

そう語るのは、公開中の映画『セフレの品格(プライド)』で、ヒロイン・抄子の初恋相手でバツ1の産婦人科医・一樹を演じる青柳翔(38)。原作コミックは、シリーズ累計430万部(紙+電子)を突破するレディースコミック史上最大級のヒット作。同窓会で再会し、一晩を共にした男女の移り変わる心情や関係性を、『初恋』『決意』(8月4日公開)の2部作で描く。

「最初にこのお話をいただいたとき、まず、原作漫画を読みました。エロくて、すごく刺激的で、とてもチャレンジングな作品になると思いました。それと、監督の城定秀夫さんの過去作品を見返しながら、監督が作るものならこれまでにないラブストーリーができるんじゃないかという期待も膨らんで、ぜひ、やらせてくださいとお返事しました」

青柳演じる一樹は、数々の女性を虜にする男。役づくりは、「原作漫画を読み漁る」ことから始めた。

「映画の台本を読みながら、『これ、漫画にあったセリフだよな』と思ったら漫画を読み直し、逆に漫画にあったセリフがない場合は、『なぜ、そうなったんだろう?』と紐解きながら一樹を作っていきました。抄子に対してドライな態度を見せる一樹ですが、その奥には何かあるんじゃないかと思わせる人物像でなければならない。いちばん試行錯誤したのは、漫画には一樹の心情も書かれていますが、生身の人間がやる場合、動きだけでどう表現したらいいのかという点ですね。読者が文字を読んで感じる印象と、人が発する言葉から受ける印象とでは違いもあるだろうし、ものすごく悩みました」

一樹との一晩が忘れられず、セフレという関係を受け入れる抄子を演じるのは、映画『私の奴隷になりなさい 第2章ご主人様と呼ばせてください』で主演を務めた行平あい佳。本編でかなりのボリュームを占めるラブシーンの撮影を青柳はこう振り返った。

「撮影の初日は、やっぱり緊張しました。ただ、濡れ場に挑むということに対しての抵抗感はまったくなかったと思います。監督からも特に要望がなかったので、撮影中も、精神的なプレッシャーみたいなものはほとんどありませんでした。それに、何よりも行平さんご自身が、こういう作風のラブシーンをこれまでにたくさん経験されてきた方だったので、すごく安心してやらせてもらいました。相手の方にとても助けられたなと思います」

近年、性をテーマに描かれる作品への注目が高まっていることについて、青柳自身はどう思っているのだろうか。

「僕の個人的意見としては、性についてオープンに語り合ったり、作品として性を大きく取り上げたりするようになったのは、いいことだと思います。それこそ、城定監督がやられてきたピンク映画とかを見返しても、昔の日本映画はもっと性描写も大胆だったし、ユーモアがあって、遊び心もあった。令和になって、そういうものが復活してきたのであれば、とてもいい時代になったと思います」

Netflixオリジナルドラマシリーズ『今際の国のアリス』では、武闘派キャラクターを演じるために肉体改造で20キロ増量。その変貌ぶりが話題を呼んだのも記憶に新しい。さらに今年は、大ヒット任侠シリーズ『日本統一 関東編』で正義感の強い刑事を演じたと思えば、放送中の『CODE―願いの代償―』では半グレ集団の代表、と演じる役もさまざま。作品選びには「こだわりがある」と青柳。

「うち(LDH)の人たちが選びそうにない作品、あるいは、やれなそうな作品は俺がやるべきだという思いがあるし、やりたい。たとえば、今回のような作風がきたとしても、たぶん、うちで手を上げる人はいないと思うんですが、果敢に声を上げるようにしています。それは最近の傾向というよりも、昔からですね。普通のものを見飽きたというか、クセの強い役ほどやりたいし、逆に、めちゃめちゃ普通の人というのもやりたい。難しいんですよね、普通って。40歳を目前に、役者としてチャレンジしたいという“欲”が強くなってきているのかなあ。若いときとはまた違う楽しさを見つけつつあります」

(スタイリスト:関敏明/ヘアメイク:白銀一太[TENT MANAGEMENT]/ 益子玲佳[REI])

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